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[標本番号:No.0953 採集日:2010/06/06 採集地:栃木県、日光市] [和名:ヒナミズゴケ 学名:Sphagnum warnstorfii] | |||||||||||||
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ようやく6月6日に日光市の山や湿原で採取したコケ類を観察できるようになった。久しぶりにミズゴケを観察した。鶏頂山に向かうハイキングコースの途中にある湿地で何種類かを見かけたが、そのうちの一つだ(alt 1400m)。 最初に同定のための形質だけを確認した。茎や枝の表皮細胞に螺旋状肥厚はない。枝には葉が密集してつき、枝葉は狭く鋭頭で、乾燥しても縁は波打たず、横断面で葉緑細胞の底辺は腹面側にある。これらの形質状態からスギバミズゴケ節 Sect. Acutifolia のミズゴケといえる。 ついで、茎葉が舌形で、上半部の透明細胞には膜壁があって貫通せず、茎の表皮細胞には穴がなく、枝葉は螺旋状に5列に配列し、枝葉背面上部の透明細胞に縁の厚い貫通する穴があることから、ヒナミズゴケ Sphagnum warnstorfii に間違いなさそうだ。 |
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久しぶりのミズゴケ観察だった。肉眼的観察からミズゴケ節・キレハミズゴケ節・キダチミズゴケ節・ウロコミズゴケ節でないこはすぐにわかる。さらにルーペで枝葉背面をみるとユガミミズゴケ節でないこともわかる。残る節候補は二つしかない。乾燥時に枝葉の縁が波打たないことから、スギバミズゴケ節のミズゴケだろうことは現地で見当がついていた。そうなると、枝葉・茎葉の形などから、候補に残るのはウスベニミズゴケ S. rubellum とヒナミズゴケだけになる。 この両者はよく似ているが、形態的にはウスベニミズゴケは枝をやや疎につけるのに対して、ヒナミズゴケは枝を密につけるとされる。しかし、最終的な決め手としては、枝葉背面上部の穴が貫通するか否か、また縁が厚いか否かということになる。枝葉をサフラニンで染色したところ、やや濃く染めすぎて穴の様子がかえってわかりにくくなってしまった(s)。そこで、あらためて全く染色しない状態で、枝葉背面上部を撮影した(r)。今日は茎葉や枝葉など、個々の形状やサイズなどの記述は省略して画像だけを列挙した。 |
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