(a) ナミガタタチゴケと混成する植物体、(b) 標本背面、(c) 標本腹面、(d) 分枝の形、(e) 腹面と腹葉、(f, g) 葉、(h) 葉身細胞、(i) 油体、(j, k) 腹葉、(l) 腹葉の葉身細胞 |
10月11日に高知県本川村の自然公園で、湿った斜面にナミガタタチゴケと混成してついていた苔類を観察した(alt 600m)。植物体は緑色から緑褐色。茎は長さ1〜2cm、わずかに枝分かれし、おおくはムチゴケ型分枝をする。葉は倒瓦状に重なり、広舌形〜丸みを帯びた三角形で、長さ1.0〜1.5mm、円頭ないし軽く尖り、腹縁基部がやや下延する。腹葉は1/2まで広い角度で二裂し、幅は茎の約2倍程度、基部が軽く下延し、各裂片の先端も広く二裂する。仮根は腹葉の基部から密生してでる。葉身細胞は多角形で、長さ30〜55μm、薄壁でトリゴンはなく、表面は平滑。油体は各細胞に2〜6個あり、多くは長楕円体で、微粒の集合。
葉が倒瓦状につき、広く開出して扁平に展開し、小さな腹葉は横に広く、仮根が腹葉基部からでること、などからツキヌキゴケ属 Calypogeia の苔類だろう。平凡社図鑑の検索表をたどると、フソウツキヌキゴケ C. japonica に落ちる。解説を読むと、観察結果とおおむね合致する。
この標本は意識的に採取したのではなく、標本No.999(ナミガタタチゴケ:非掲載)に多数混じっていたもので、新たに標本番号No.1078を立てることにしたものだ。
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