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[標本番号:No.1023   採集日:2010/10/12   採集地:愛媛県、久万高原町]
[和名:ヒメクラマゴケモドキ   学名:Porella caespitans var. cordifolia]
 
2010年12月25日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b) 標本:背面、(c) 標本:腹面、(d) 背面、(e) 腹面、(f) 腹葉と腹片、(g, h) 葉と腹葉、(i) 腹片とキール、背片の先端、(j) 葉身細胞、(k) 油体、(l) 茎の横断面

 四国の面河渓で遊歩道脇の石壁にクラマゴケモドキ属の苔類が群生していた(alt 750m)。茎は規則的に数回羽状に分枝し、茎の長さは4〜10cm、葉を倒瓦状につけ、全体につやがある。背片は卵形で、長さ1.5〜2.5mm、葉先は長く漸尖し、背縁の基部は茎を超えて反対側にせり出す。腹片は長舌状で全縁、腹縁基部は長く下延する。キールは弓状となって凹む。腹葉は茎幅よりやや広く、広卵形〜台形で、先端は切頭で縁に歯があり、基部は長く下延する。葉身細胞は丸みを帯びた多角形で、長さ25〜40μm、トリゴンは大きい。油体は小さく、各細胞に多数あって類球形〜紡錘形で、表面は平滑。

 平凡社図鑑の検索表にあたってみた。葉にキールがあり、背片と腹片は腹片の幅の1/5以上で合着し、腹片の基部は長く下延し、背片の背縁は茎の反対側に張り出すから、候補は2種となる。さらに、背片の先端は尖るから、残るのはヒメクラマゴケモドキ Porella caespitans var. cordifolia となる。以前観察した標本(No.353No.291)とも比較してみた。No.353はやや疑問が残るが、ほぼ似たような観察結果が得られた。