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[標本番号:No.1024   採集日:2010/10/12   採集地:愛媛県、久万高原町]
[和名:ツクシヤバネゴケ   学名:Cylindrocolea recurvifolia]
 
2010年12月27日(月)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
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(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b) 標本:湿時、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e) 一個体、(f) 茎の一部、(g) 茎についた葉、(h) 葉、(i) 葉身細胞、(j) 油体、(k) 茎の表皮、(l) 茎の横断面

 四国の面河渓で遊歩道脇の常に水のしたたり落ちる岸壁に苔類と思われるコケが一面にマットを作っていた(alt 750m)。茎は長さ1〜1.5cm、不規則に分枝し、葉を含めた幅は0.5〜0.6mm、茎の先端は時に鞭状となる。葉は茎に対して斜め横につき、中心線が斜めに傾いたような形で、斜めに開出し、接在〜離在し、葉基部は流下し、長さ0.2〜0.3mm、不均等に1/3〜1/2まで二裂する。腹葉はない。葉身細胞は方形で、やや厚壁、トリゴンは小さく、表面は平滑。油体は各細胞に1〜4個あり、球形でほぼ均質。茎の表皮細胞は、表面からみると楕円形でやや厚膜。茎の横断面で中心部の細胞ははやや大きい。無性芽などはない。

 コヤバネゴケ科 Cephaloziellaceae の苔類だと思う。平凡社図鑑の検索表をたどると、ツクシヤバネゴケ属 Cylindrocolea に落ちる。さらに種への検索表からはツクシヤバネゴケ Cylindrocolea recurvifolia となる。種の解説を読むと観察結果とほぼ符合する。井上『日本産苔類図鑑』(p.130)を読むと、間違いなさそうだ。