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[標本番号:No.1060 採集日:2010/10/15 採集地:徳島県、木頭町] [和名:イワイトゴケモドキ 学名:Haplohymenium sieboldii] | |||||||||||||
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徳島県木頭村に位置する高の瀬渓谷は剣山スーパー林道の下部にあって石灰露岩がよく目立つ。ここの渓谷でいくつかのコケを採取した。今日は石灰岩壁についていた糸くずのような蘚類を観察した(alt 660m)。茎は長さ2〜4cm、不規則に分枝し、乾燥時は葉を密着させ、湿ると葉を展開させる。葉を含めた茎幅は、乾燥時0.2〜0.3mm、湿時0.8〜1.2mm。 葉は長さ0.6〜0.8mm、広卵形の基部から漸尖して鋭頭、葉面はやや暗く、基部の中肋近くが半円形に明るい。中肋は葉長の3/4〜4/5に達する。葉身細胞は長さ8〜15μm、丸みのある多角形で、4〜6個の乳頭がありやや厚膜で暗い。葉の基部中肋付近の葉身細胞は、菱形〜長楕円形で、表面は平滑ないし微細な乳頭があって明るい。葉の横断面で中肋にはガイドセルもステライドもない。茎の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚壁で小さい。 シノブゴケ科 Thuidiaceae イワイトゴケ属 Haplohymenium のイワイトゴケモドキ H. sieboldii だろうと思う。現地でははじめ多分イワイトゴケ H. triste だろうと思ったので、採取するつもりはなかった。ところが、葉の形をルーペでみるとどうも違う。それで採取したものだった。保育社図鑑、平凡社図鑑ともに「茎はやや羽状に分枝し」とあるが、本標本ではそのような分枝はみられなかった。また「枝葉はイワイトゴケのように折れやすくはない」という記述はまさにその通りだった。 |
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