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[標本番号:No.1083   採集日:2011/04/07   採集地:茨城県、鹿島市]
[和名:ツチノウエノコゴケ   学名:Weissia controversa]
 
2011年4月16日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a) 植物体、(b) 標本、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e, f) 葉、(g) 葉の上部、(h) 葉身細胞、(i) 葉の先端、(j) 葉の基部、(k, l) 葉の横断面、(m) 茎の横断面、(n) 胞子体、(o) 朔、(p, q, r) 朔歯

 久しぶりにコケの観察をした。3月11日の東北大震災と原発事故のため、これまでコケを採取したり観察することができなかった。4月7日になってようやく茨城県の被災地の近辺で1種類だけコケを採取して帰ってきた。公園の土の斜面に出ていたセンボンゴケ科の蘚類だ(alt 30m)。
 茎は長さ3〜5mm、横断面には中心束があり、表皮細胞は薄膜。葉は線状披針形〜披針形で、長さ2.5〜3.2mm、乾くと強く巻縮し、全縁で、上半部の縁は狭く内曲する。中肋は強く、葉頂から短く突出する。雌苞葉は他の葉と比較して幅広で長く、基部が鞘状となっている。葉身細胞は方形〜多角形で、長さ6〜10μm、表面には多くの小乳頭があって暗い。葉の横断面で中肋にはガイドセルとステライドがあり、中肋背面は平滑。
 朔柄は長さ5〜6mm、朔は円筒形で直立し、僧帽型の帽、長い嘴状の蓋をもつ。朔の基部には少数の気孔がある。朔歯は一重で16枚からなり、披針形で鈍頭、長さは100μmを超えず、基礎膜はなく、表面は小さな乳頭に被われる。口環がある。

 コゴケ属 Weissia のツチノウエノコゴケ W. controversa Hedw.だろう。あまりにもありふれた蘚類なので、すでに何度か観察覚書に取り上げたつもりでいた。これが第一号ということになる。朔の大部分が未成熟だったため、朔歯の観察に難儀した。ごくわずかに老熟してすっかり茶褐色になった朔があったのでかろうじて朔歯の観察ができた。それにしても、一ヶ月以上コケ観察をしなかったのはこの4年間で初めてのことだった。