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[標本番号:No.1103   採集日:2011/07/12   採集地:熊本県、泉町]
[和名:ヒメクジャクゴケ   学名:Hypopterygium japonicum]
 
2011年7月27日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 乾燥時、(d) 湿時、(e, f) 背面、(g, h) 腹面、(i) 側葉と腹葉、(j) 枝の側葉、(k) 側葉上半、(l) 側葉下半、(m) 側葉の細胞、(n) 側葉の中央、(o) 側葉の下部、(p) 側葉の横断面、(q) 腹葉、(r) 腹葉の中央

 3ヶ月ぶりにコケの観察をした。7月は九州やら広島に行っていて、きのこやコケはわずかに採取するのみで、ほとんど観察をしていなかった。今日観察したのは九州入りした初日に熊本県の五家の荘で採取したもの。林道脇のやや開けた湿度の高い石灰岩壁一面にびっしりとついていた(alt 450m)。クジャクゴケ属 Hypopterygium であることはわかったが、種名までは現地では分からなかった。図鑑類は持参していなかった。
 一次茎は石灰岩壁を這い、二次茎が立ち上がり団扇状に枝を広げる。二次茎の下部は枝を出さずに疎らに葉をつける。枝の腹葉の中肋は葉先に達し、側葉の幅広い側の縁の歯は上部に限られる。中肋は葉先のやや下まで延びる。二次茎の中央付近から直接出る側葉と腹葉は、枝の側葉や腹葉よりひとまわり大きい。腹葉も側葉同様に、葉縁には舷があり縁上半部には歯がある。側葉中央部の葉身細胞はやや長い六角形で長さ16〜28μm、基部では長さ24〜43μm。腹葉中央部の葉身細胞は長さ16〜26μm。朔をつけた個体は見あたらなかった。

 ヒメクジャクゴケ H. japonicum だろう。なお、このコケは石灰岸壁に続く石積みの塀にまで、広範囲にあたりいちめんに密集して広がっていた。手元には5月16日に日光で、同22日に富士山で、6月26日に富山県で採集したコケ標本が、手つかずのまま残っている。当面、順不同で気ままに観察してアップしていくことにしよう。