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[標本番号:No.1158   採集日:2017/02/28   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ウマスギゴケ   学名:Polytrichum commune]
 
2017年3月1日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 葉の付き方、(g) 葉、(h) 葉の鞘部、(i) 葉の中央部、(j) 葉裏面の牙、(k) 葉身細胞、(l) 鞘部の細胞、(m) 葉腹面の薄板の列、(n) 葉の縁の歯、(o) 葉中央部の断面、(p) 薄板細胞、(q) 葉の鞘部断面、(r) 茎の断面

 自宅の近くの小学校脇の空き地一面に大型のコケが密集していた。ずっと雨が降っていないのですっかり乾燥して全体が褐色となり、緑色の部分は非常に少なかった。明るく開けた場所にでていたのでおそらくウマスギゴケだろうと思ったが、念のために詳細に観察してみた。
 茎は地面にしっかり根付き、引き抜くのにかなりの力が必要だった(c)。茎の長さは15〜25cm、ほとんど枝分かれはない。乾燥して葉が茎に密着して穂のようになっているが、一部の葉は上半部が後方に反り返っている(b)。水没させると葉はたちまち広く展開した(f)。
 葉は基部に透明で薄膜の鞘があり、長い披針形で長さ8〜12mm、鞘部の先から先端までの腹面の全体が縦に薄板で密に覆われている(m)。葉の縁には顕著な歯があり(i, n)、葉の背面上部の中肋上には鋭い牙状の歯がある(j)。鞘部では中肋は明瞭だが、その先は葉の大部分が中肋となり一層の葉身部との境界は不明瞭。
 葉の基部は一層で透明な翼部からなり(h)、翼部は、長さ80〜120μm、幅6〜8μm、線形から長い矩形の細胞からなり、細胞に内容物は見られない(l)。葉の中肋部は広く複数の細胞層からなり(o)、葉身細胞は円形から楕円形で長さ8〜12μm(k)。葉の腹面がわの薄板は、断面で4〜6細胞の高さで、頂端細胞の先端は凹状になっている(o, p)。茎の断面には中心束のようなものがあり、仮導管のような組織も見られる。ウマスギゴケに間違いなさそうだ。