(a, b) 発生環境、(c, d) 植物体、(e) 標本:乾燥時、(f) 標本:湿時、(g) 茎表面の仮根:乾燥時、(h) 茎表面の仮根:湿時、(i, j) 葉、(k) 葉の翼部、(l) 葉の先端 |
2ヶ月以上前の4月29日に矢板市の八方ヶ原で採取した蘚類を観察した。画像(a, c)と画像(b, d)はそれぞれ少し離れた別の場所で群落を作っていて、見た目の姿も触ってみたときの感触にもかなりの差異を感じていたので、別の標本として持ち帰っていた。しかし詳細に観察したところ、両者ともに同一種と判断することになり標本を一本化した。
やや開けた樹林の腐植土に覆われた半日陰地に群生していた。茎は立ち、高さ2〜8cm、下部は褐色の仮根に覆われ、上部の茎の表面には白色(乾燥時)〜褐色(湿時)の細い仮根に密に覆われる。葉は密につき、乾燥時はほぼ一方向に鎌状に曲がり、湿ると茎に直角に近い状態に開く。葉は長卵状披針形から溝状となって披針形に細く長く伸び、長さ7〜12mm、葉の上半部の縁には歯がある。中肋は葉頂に達し、基部では葉の幅の1/8〜1/6の太さで、中肋上部の背面では鋭い歯を備えた数列の低い薄板をなす。
葉身細胞は、上部から中央部では長い菱形〜長楕円形で丸みを帯び角ばらず、上部では長さ60〜80μm、中央部では100〜120μm、幅はいずれも幅15〜25μmで、平滑。細胞膜にはくびれがある。翼部の細胞は方形で大きく、長さ50〜70μm、幅30〜50μm、膜は薄くくびれはない。中肋の断面ではガイドセルとステロイドが発達している。
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