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[標本番号:No.1197 採集日:2017/04/27 採集地:栃木県、日光市] [和名:ナワゴケ 学名:Eumyurium sinicum] | |||||||||||||
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4月29日に矢板市の八方ヶ原で採取したコケ類の観察を終えてほっとしたのも束の間で、採集箱を見ると4月27日に奥日光の小田代ヶ原と戦場ヶ原で採集したコケが何点か忘れ去られてそのままになっていた。今日も雨でフィールドには出られなかったので、そのうちのひとつ、倒木や樹幹に厚いマットを作っていたややゴワゴワした硬めの感触のコケを観察した。
一次茎は非常に細く倒木や樹幹の表面を這い、二次茎は多数密集し斜上して、長さ2〜5cm、わずかに枝分かれする。葉をつけた茎の幅は乾燥時1.5〜2.5mm、湿時2.5〜3.5mm。葉は密に覆瓦状につき、乾燥時にはわずかに茎に接し、湿るとやや展開する。 |
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茎の断面で表皮細胞は厚壁で小さく、明瞭な中心束はみられない。胞子体は枝の途中からでて、朔柄は長さ1〜1.2cm、朔は楕円形で相称、長さ1.8〜2mm。外朔歯は披針形で16枚、灰白色で基部から二裂し、表面は微細なイボでおおわれる。内朔歯の有無は不明。明瞭な口環がある。胞子に大小があり小さいものは径20〜25μm、大きなものは50〜60μmほどあり、いずれも表面には微細なイボがある。
配偶体の観察結果から判断するかぎり、Pterobryaceae(ヒムロゴケ科)のEumyurium sinicumに落ちる。保育者図鑑ではこの学名に対して「ナワゴケ」の和名を、平凡社図鑑では「フクラゴケ」の和名を与え「ナワゴケ」の名称も細字で記される。ここではナワゴケの和名を採用した。 |
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