先月23日に自宅近くの日光市手岡の人丸神社で杉の樹皮に着いていたタイ類を持ち帰っていた(a, b)。その日のうちに油体の確認だけはしたが、そのまま放置状態になっていた。
鞭枝で樹皮に張り付いているのだろうと思って、枝の一部を摘まみ取るといとも簡単に樹皮から剥がれた。葉のつき方は倒瓦状で、背片のみで腹片はなく、小さな腹葉を持ち、二叉状に分枝し、葉を含めた幅は1〜1.5mmほど。ルーペで見てBazzania(ムチゴケ属)かCalypogeia(ツキヌキゴケ属)だろうと思った。油体が白色の紡錘形で1細胞に3〜8個ほどあったので(k, l)、ツキヌキゴケ属ではなく、ムチゴケ属だろうと見当をつけたが、鞭枝が非常に少ないので迷いが始まった(d)。そこまでは採取当日に確認したが、すっかり忘れて机上に置いたままだった。
改めて標本を見ると、緑色こそ失っていないがすっかり乾ききっていた。そこで、標本の一部を水没させて10分間ほど待つと、葉が広がってきた(e)。これを顕微鏡の低倍率で見た(f)。葉は重なり合って、卵形〜舌形で、先端はどちらかというと切型で二つの歯を持ったものが多い(f, i)。腹葉は茎に接在し、透明で茎幅よりやや広く、丸みを帯びた四角形〜台形で、先端が二裂したものが多い(g, j)。水封だとコントラストが弱く見にくいので、サフラニンで染めた(h)。記述順がバラバラだが、葉も腹葉も縁は全縁で、葉身細胞のトリゴンは小さく平滑。
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