2002年10月2日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
KOH やアンモニアで処理すると胞子の色が変わってみえた。
 昨日は日光に観察に出かける予定にして休暇をとっていたのだが、台風接近に伴う暴風雨のために断念せざるをえなかった。しかたないので、最近採取してまだ手元にサンプルが残っているきのこをいくつか検鏡した。ここではサケツバタケ(?)だけをとりあげた。
 サケツバタケのヒダを一枚取り出して切片(a)をつくり、ヒダ実質部を拡大(b)してみた。ヒダ実質 の構造はわかるが、側シスチジアが見つからない。ヒダ先端を何枚も切り出してやっとのことで縁シスチジア(c)がわずかに見つかった。いつものとおり、まずは担子器(d)、胞子(e)などは水でマウントしたもので検鏡した。このプレパラートにカバーグラスの縁から スポイトで30%KOHを流し込んでみたが、縁シスチジア(c)に色の変化はなかった。傘表皮(f)には細かい毛が生えている。
 クリソシスチジア(黄金シスチジア)が在るはずだと思い、最初KOHでマウントして探す が見つからない。KOHを10%、30%、50%と次第に濃いものに変えていったが一向にクリソシスチジアは見つからない。KOHの濃度を高くすると胞子の色は次第に黄色味が強くなった(g)。一方アンモニア(市販品そのまま)でマウントしてもやはりクリソシスチジアはみつからない。こちらは胞子の色が暗緑色を帯びてきた(h)。油浸100倍で見たときの色(i)も、 水でマウントしたとき(e)とはずいぶん異なっていた。50%KOHでマウントしたものはさら に黄色味が強かった。(c)の縁シスチジアはアンモニアでも黄金色には変わらなかった。 大体変色する内容物をもったシスチジアがない。となると、このキノコはサケツバタケではないのだろうか。あるいはクリソシスチジアを持たないサケツバタケというものがあるのだろうか。
 この検鏡に当たっては、十分成熟した子実体を選んで使った。クリソシスチジア探しのために試薬をいろいろとっかえひっかえ使ってみたり、何度も切片作りをしたりでスライドグラスを数十枚つかってしまった。シスチジアひとつのためにこんなに長時間をかけたのは初めてだった。今日はこれから福島県まで行ってこよう。また新しい出会いが待っているはずだ。

日( )