[追記] |
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ミズベノニセズキンタケとして扱った水性菌であるが、ミクロの姿を検討してみると再考しなくてはならないようだ。採取したときには何の疑問もなくミズベノニセズキンタケだと考えていた。ちょっと気になる点があったので、たった今あらためて切片を作って(a)確認をしてみた。 托髄層は絡み合い菌組織(b)、托外皮層は矩形菌組織から多角菌組織をなしている(c)。メルツァー液で染めてみたが、アミロイド反応はない(ように見えた)。観察中に緊急電話が入り10分くらい放置することになった。再び顕微鏡のところに戻ってみると子嚢頂孔部分が何となく青い。それもリング状に青く染まっているようだ(d)。切片全体が茶褐色に染まってみにくいので、水で洗ってみるとはっきりとアミロイドリングの存在を確認できた(e)。念のために他の個体から切り出した子嚢先端部分を見ると、どの切片の頂孔も青く染まっている(f)。 子実体の姿こそかなり大きかったが、全体にまだ幼菌らしく未熟胞子をもった子嚢がたくさんある。胞子紋はほとんど採取できず、珪藻ばかりが目立った。子嚢の中の胞子サイズはやや小さめだが、ミズベノニセズキンタケとしても全く疑問はない。側糸の姿からも疑問はない。 保育社「原色日本新菌類図鑑」やスイス菌類図鑑Vol.1の記述によれば、子嚢頂孔は非アミロイドとなっている。ただ、このきのこは過去に何度も見ているが、メルツァー液にひたしても一見したところアミロイド反応はない。時間経過とともにアミロイド反応がでてきたが、これとて、非常にていねいに観察しない限り、子嚢頂孔のアミロイドは気がつきにくい。 [追記:2006.5.14] この菌はミズベノニセズキンタケではなく、ニセビョウタケ属Hymenoscyphusの仲間の菌である。というのは子嚢頂孔がヨード反応陽性であるから、ミズベノニセズキンタケ属Cudoniellaではないことは明白である。思い込みと勘違いに基づく誤った判断による記事である。 |
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