2003年7月13日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
 川越の保護林で採取したヤマイグチのミクロの姿を覗いてみた。胞子(a)は傘を2時間ほどカバーグラスの上に伏せて採取したものだ。
 最初管孔面に水平に切片を切り出した。やや水っぽく柔らかいサンプルだったので、カバーグラスを載せると、すぐにひとつひとつの管孔がバラバラのリングに分かれてしまった(b)。ほんのわずかでも厚いと、カバーグラスをかぶせたとたんにメディウスの帯のようになって捩れたり潰れてしまう(c)。管孔リングの内側を拡大してみると、側シスチジアを帯びた子実層が見える(d)。担子器はいずれも2つの担子柄を持っている(e)。4担子柄をもったものがないか探し回ったが、すべてが2担子柄のものばかりだった。
 次に管孔面に垂直に切片を切り出した。管孔部の実質は管孔に平行(f)に走っている。ヒダを持ったきのこでいえば平行型である。そして先端には側シスチジアとほぼ同じような形とサイズの縁シスチジアがみられる(g)。担子器を一回り大きくしてやや太めにしたようなサイズだ(h)。傘表皮(i)は細胞状被で、類球形の細胞が連なっている。
 採取時、ヤマイグチにしては傘表面がややヌルっとしているなと感じたが、雨のせいだと思っていた。それで昨日の雑記ではヤマイグチとして掲載したが、どうやらこれはスミゾメヤマイグチのようだ。傘表面に粘性のあることやシデの樹下に出ていたこともそれを裏付ける。保育社の図鑑などの記述と比較すると胞子サイズがやや大きめだが、まず間違いなさそうだ。
 それにしてもイグチ類の柔らかい生標本から薄い切片をつくるのはとても難しい。乾燥標本だったら薄切りは楽だが、生だと非常に苦労する。そして、剃刀もすぐに切れなくなり、数回使っただけもうナマクラになってしまう。やはりイグチの検鏡サンプルは、定石どおり半乾燥あるいは乾燥状態にしてから、切片作りをするのが賢明というものだろう。

日( )