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フロキシン(Phloxine B)はきのこの顕微鏡観察をする上では、メルツァー液に次いでよく使われる染色剤のひとつだ。石油原料のタール系色素であり、赤色104号として食品添加物として広く使われ口紅などにも利用されている。劇毒物ではないので、誰でも購入することができる。薄めて使うので数グラムもあれば1年以上使える。細胞質などをよく染めるので、菌糸型の判定などでは絶大な威力を発揮する。しかしなぜかアマチュアの間では意外と使われていない。 これまでも日常フロキシンを多用しているが、硬質菌の菌糸型の判定にこれほどまでに威力を発揮するとは考えてもいなかった。生殖菌糸(原菌糸、一次菌糸)には必ず隔壁があり、細胞質などの内容物を持っている。菌糸壁が厚膜化して骨格菌糸と間違えそうなケースでも、フロキシンを使えば簡単に原菌糸かどうかを判定できることが多い。 今回の日本菌学会関東支部ワークショップは服部力博士による「硬質菌の分類と顕微鏡観察」で非常に好評だった。参加して最大の収穫はフロキシンと消しゴムを使うと菌糸型がとても楽に判定できるということだった。消しゴムをカバーグラスの上に当てて軽くこすると、菌糸がきれいにバラせてとても見やすくなる。以前は注意深く薄い切片を作って、フロキシンで染めてそのまま検鏡していた。この方法だと薄く切れない場合には判定が難しい。一方、消しゴムを利用すると多少厚めの切片でも容易にほぐせるので楽に観察できる。 フロキシンとカタカナ表示をすると同名になってしまうが、抗生物質にFloxinというものがあり、これは色素ではなく全く別の薬品である。正確を期すならフロキシンBといえば間違いない。 |
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