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自宅団地の近くで腐朽材から緑色の小さな盤菌がでていた。11月16日に川崎市の緑地で見たものと同じである(a)。ロクショウグサレキンに似ているが子嚢盤の表面が白っぽい。 子嚢盤の切片(b)をみると裏側の部分(托外皮層)だけが緑色をしている。この托外皮層はロクショウグサレキンやらロクショウグサレキンモドキでは絡み合い菌組織なのだが、この菌では円形菌組織からなっている(c)。子実層は淡い茶色、中間の部分(托髄層)は緩い絡み合い菌組織からなり色も無色だ(c)。子実層の基部直下の組織はロクショウグサレキンやロクショウグサレキンモドキでは緑色をしているが、この菌ではそれはみられない。 水でマウントした状態で倍率を上げてみたが、子嚢も胞子もとても見にくい(d)。そこでメルツァーで染めた。子嚢先端にアミロイドリングがみえる(e)。胞子の形は紡錘形をしている(f)。 このきのこは「山渓フィールドブック きのこ」にヒメロクショウグサレキン(仮称)として掲載されているのだが、ロクショウグサレキンモドキと同じく解説はほとんど何もない。イギリスのM. J. Berkeleyによって1859年にPeziza omnivirens Berk.として報告され、後にJ. R. Dixonによって属の変更が行われChlorociboria omnivirens (Berk.) Dixonとされたらしい。属名のchlorociboriaとは「緑色の盃」、種形容語(epithet)のomnivirensとは「全体が緑色の」といった意味である。 ちなみに、同じ仲間のロクショウグサレキンのepithetであるaeruginosaは「緑青色をした」、ロクショウグサレキンモドキのaeruginascensは「緑青色になる」という意味だ。また、仮称に「ヒメ」とついているが、子実体の大きさはロクショウグサレキンに比べて特に小さいとは思えない。胞子サイズはやや大きめである。いずれにせよ、C. omnivirensを記述した文献を知らないので詳細についてはわからない。以下に上記3種の観察結果を表記してみた。
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