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今の時期に出る「ヒラタケ」といえば、まず間違いなくウスヒラタケかトキイロヒラタケ(a)だろう。トキイロヒラタケという和名には惑わされやすい。いわゆるヒラタケ色をしていると、なかなかトキイロヒラタケとは思えないかもしれない。天然自然では、夏にヒラタケがでることは希らしい。 そのトキイロヒラタケは、図鑑などによるとミズナラやカエデなどの広葉樹にでるされる。しかし、ピンク色の典型的なトキイロヒラタケは、なぜかフジの老木からよく出る。写真のもの(a)も、滋賀県御池岳の沢のフジからでていた。ミズナラからは灰白色のものしか見たことがない。 胞子はありきたりの姿をしていて、水で封入するととても見にくい(b)。ヒダ切片は意外とと切り出しが面倒だ(c)。ひだ実質は錯綜型(d)、先端にはシスチジアらしき組織がみえる(e)。ヒダを一枚つまんで、フロキシンを加えて縁を見た。薄膜の縁シスチジアが多数ある(f)。3%KOHに置き換えると縁シスチジアの形が明瞭になった(g)。 菌糸構造は、dimiticつまり原菌糸と骨格菌糸からなっているようにみえる(h)。よくみると、やや厚壁の菌糸には隔壁やクランプをもったものがある(i)。菌糸壁が厚くともこれは原菌糸ということになる。もちろん、薄壁の菌糸にはいたるところにクランプが見られる(j)。 菌糸型の観察(消しゴムでごしごし)には、こんな高倍率にするとかえって分かりにくい。対物20ないし40倍くらいで、広い視野の中で隔壁やらクランプの有無を確認するのが常道だ。これまでにも何度も同じ間違いをしてdimiticをmonomiticと間違えている。 とき色ヒラタケという和名は、学名のPleurotus salmoneostramineus (鮭肉藁色をした)をそのまま和名としたもの。現在、P. salmoneostramineusは、P. djamorのシノニム(同義語)とされ、これは灰白色のきのこだという。トキイロヒラタケかならずしも、鴇色とは限らない。 |
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