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これまでの「コケカッター (1)〜(4)」で明らかになった問題点などを考慮した上で、コケカッターで生のきのこを切ってみた。大型のきのこには使えないので、小さなきのこが対象となる。写真(a〜c)で赤色の部分は、ポリエチレンのマットを示している。緑色は、カミソリの刃がマットに食い込んで試料を切れる幅である。 |
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所沢で採取した小さな落ち葉分解菌(d)のヒダを切ってみた。ヒダのサイズは、幅0.3〜1mm、長さ3〜5mmで、コケの葉より少し大きい。しかし、きのこのヒダは、コケの葉と違って非常に脆い。ヒダを1枚だけ寝かせて切ったところ、ヒダ実質がペシャンコに潰れてしまった(e)。何度か新しい刃に交換して切り出しを行ってみたが、いずれも同じ結果であった。カミソリの刃の寿命はせいぜい数回である。それでも、側シスチジアのあることは分かる(f)。 同じきのこのヒダををコケカッターを使わず、実体鏡の下で直接カミソリを手前に引きながら切ってみた。やや厚めではあるが、ヒダ実質は潰れていない(g)。このやり方だと、数十枚のヒダを切ることができた。脆い菌糸に対する「押し切り」と「引き切り」の差なのかもしれない。 | |||||||
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次に新しい刃に交換して、数枚のヒダを一緒にしてコケカッターの刃を押し下げたところきれいに切れた(h, i)。ただし、ヒダ実質が潰れないように切り出すためには、やや厚めの切片を作らざるを得ないようだ。切り出す幅がやや広くなるので、写真(b)の方法を使った。同じ刃先で切れるのは数回までである。刃を次々に交換しては数回試みたが結果は同じである。 引き続き、同じように数枚のヒダを含めて、コケカッターを使わずに、実体鏡の下でカミソリを向こう側から手前に引くように切ってみた。(j, k)。この方法だと、さらに薄い切片を作れることがわかる。そして、カミソリの刃は、数十回の使用に耐えた。 |
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次に、傘径40〜50mmほどあるフミヅキタケ属のヒダを切ってみた。落ち葉分解菌に比較するとヒダはかなり大きく、比較的しっかりしている。上記(a)、(b)の位置では、ヒダの切り残しができてしまって上手く切れない。ヒダの縁付近だけを細長く切り出したものを作るか、あるいは別の工夫をしなくてはならない。後者を選び、スライドグラスを2枚重ねにして(c)、ヒダ薄片を切りだしてみた。刃先が鋭利なうちは「押し切り」でも、なんとかきれいな切片が切り出せた。 コケカッターでキノコのヒダなどの切片を作るのであれば、一気にカミソリを下ろすことだ。ゆっくり下げるのは禁物である。さもないと、ヒダが潰れてしまう。また、2回ほど切ったら、刃先を交換することである。 コケカッターを使って、いろいろ試みてきたが、キノコのヒダや傘表皮などの切片を作るのであれば、実体鏡の下で「引き切り」をするか、ピスなどを使った方が楽であった。コケカッターは、幅の狭い試料を切り出すのに有効だが、幅広の試料やきのこのように脆い試料を切るのは苦手である。コケカッターをきのこに流用するために悪戦苦闘するよりも、やや幅広の試料を「引き切り」で切り出せるような「キノコカッター」を考案するのが現実的だろう。 |
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