2006年12月21日(木)
 
押し潰し法 (1)
 
 薄片を切り出さないと顕微鏡観察の難しいものは多い。しかし、押し潰さないと観察の難しいものもある。シスチジアや担子器のサイズを測るには、薄切り切片では難しい。また担子器の基部のクランプの有無や、硬質菌の菌糸型の確認をするには、押し潰しによるプレパラートが必須となる。問題は、押し潰しをするときの力加減と方法だろう。
 「押し潰し」とはいっても、組織を破壊してしまったり、形態を大幅に変えてしまっては、寸法を計測したりできない。押し潰す目的は、観察しやすいように組織をバラすことにある。したがって、組織をバラバラに分解しやすくするための工夫が必要となる。
 水で封入したものに力を加えると、組織がバラされる前にペシャンコに潰れてしまう。したがって、押し潰し観察では基本的にKOHで封入することになる。3〜5%程度を使うが、硬質菌の菌糸型の確認であれば、10〜20%の方が楽なことも多いようだ。次に、カバーグラスの上から力を加える。組織を破裂せず、重なり合わぬよう、力の加え加減と方向に注意が必要となる。ふだんやっている方法を以下に記してみた。

 最初に、上から軽く力を加える。これだけで組織がバラバラになるきのこもある。KOHの濃度を上げると、弱い力ですぐに全体がバラバラになる。その反面、シスチジア先端の結晶物等はすぐに溶けて消失してしまう。また、担子器の柄もKOH濃度によっては消失してしまう。
 次に、カバーグラスを左右に細かく動かすように力を加えて、組織を広げるように力を加えていく。慣れないうちは、組織が少し潰れて広がったら、顕微鏡で覗いてみて、さらに力を加えていくとよい。慣れると、見た目でどの程度バラされているか分かるようになる。
 このとき、先端の細いものでカバーグラスに圧を加えると、ガラスが割れたり組織が破壊されやすい。割り箸の先とか、消しゴムなどを使うと成功率が高いようだ。指先で直接カバーグラスを左右にずらしながら圧を加えるのも一法かもしれない。


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