2006年12月22日(金)
 
押し潰し法 (2)
 
 タマキクラゲを使って押し潰しをやってみた。関東地方では今の時期どこでも見られる。最初に、グニャグニャの生から切り出した(a, b)。生からの切り出りはかなり難しい。だから、そのような馬鹿げたことに無駄な労力を費やすよりも、(半)乾燥状態にして切り出すのが賢明だ。(半)乾燥状態からならば、(a)、(b)程度の厚さに切り出すのはとても簡単だ。
 
 
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 せっかく薄切りができても、そのままでは担子器の観察は難しい(c)。目的を担子器の形態観察としてみた。最初から薄切りなどせず、敢えてハサミで適当な厚みに切り取った(d)。もっと厚くてよい。これをベースに組織をバラした。なお、以下すべてフロキシンで染めている。
 キクラゲの仲間では厚いゼラチン質に邪魔されて、簡単には組織をバラせない。割り箸の先で、カバーグラスを左右に細かく動かして、組織を広げるように力を加えた。すると、菌糸部分とゼラチン部が分離する。そこで、カバーグラスを外して、ゼラチン部分をピンセットで取り除いてから、再びKOHを加えてカバーグラスをかぶせた。この状態で検鏡したのが(e)、(g)である。
 再び軽い力で、カバーグラスを左右に揺するように力を加えて、組織を均質に広く薄く伸ばした。再び検鏡してみると、重なり合っていた担子器はバラバラになった((e)→(f)、(g)→(h))。ゼラチン質の厚い層がなくなった分だけ、重なり合いを解消するのが楽にできる。
 適度の加圧で組織をバラせばよいのだが、「適度の加圧」には慣れが必要かもしれない。そこで、力を加えすぎるとどうなるかを示してみた。少し力が強すぎると、組織の内容物が外に飛び出しはじめる(i, j)。さらに力を加えると、次々に破壊が進む(k, l)。

 「押し潰し観察」とは、「組織をバラして観察」することに他ならない。潰してペシャンコにしてしまったり、組織を扁平状態にしてしまうことは、避けなくてはならない。そのためにも、「潰す」のではなく「バラす」つもりで、圧を加えることが必要だ。


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