2007年5月24日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先日水上町で出会った小形のホウライタケ属が残っていたので確認してみた。胞子紋は帰りの車の中で採取したのだが、どこに置いたのかすっかり忘れていた。後部トランクに置いたアイスボックスの中に残っていたが、5日間も放っておいたので、カバーグラスは真っ白になっていた。一部は発芽して「菌糸紋」になっていた。そこから、少し削り取って検鏡した(a, b)。

 傘は径2cm、鐘型ないし和傘の様な形をし、頂部は饅頭のような形をしている。表面には放射状に紫色の溝が20〜24本あり、ちょうどその同じ位置に、親ヒダが同数ある。傘中央部の饅頭部は平滑。クリーム色のヒダは離生で、子ヒダも7〜8本みられる。幅は広いところで4mm前後。柄は55〜60×2mm、上下同大の棒状、下部は橙色で上部は白色、表面は微毛に覆われる。強靱である。根本はやや太くなり、白色の菌糸に覆われ、菌糸は落ち葉に広がっている。
 棍棒型の大きな胞子は、30〜35×5〜8μmほどある。ヒダを切り出してみた(c, d)。縁シスチジアのような組織はあるが(e)、側シスチジアやそれらしき組織はない(f)。子実層托実質は錯綜型。親ヒダの縁から、幅1mm長さ5mmほどの小片を切り出して、フロキシンで染め3%KOHで封入した後、カバーグラスを左右にずらしながら軽く押さえて、子実層をバラバラにした(g)。
 担子柄をもった担子器を探したが、結局見つからなかった。このため、(偽)担子器とシスチジア様組織とを区別できなかった(h)。(偽)担子器の基部にはクランプがある。子実層托実質を構成する細い菌糸にはクランプがある(i)。
 最後に傘部分を切りだしてみた。傘に厚みが無いので、フロキシンで染めると、傘上表皮と反対側に位置する子実層が濃く染まった(j)。傘表皮をみると丸茄子あるいは電球のような細胞が子実層状にならんでいる(k)。サイズを計測するのであれば、これもKOHで封入して組織をバラしたほうが確実だ。その気はないが、とりあえず油浸100倍でみた(l)。

 人間の認知能力というのはたいしたものだ。列挙すると上記のようにダラダラと長くなるような内容を、一瞬のうちに把握して、頭の中で、既知の他のきのこと比較しながら、これをスジオチバタケであろうと判断するのだから。しかし、写真を使わず、図版を起こして、きのこの特徴を詳細に記載しようとすれば、こんな程度ではまるで足りない。しかも、突拍子もない譬えや主観的な記述は許されない。採取したすべてのきのこについて、詳細に記録したり、標本を残したりするのは膨大な時間と労力が必要だ。やはりていねいに観察して、図も描き、標本として残すことを考えると、一日に1〜2種が限界だろう。自分の観察能力以上の数を持ちかえるととんでもないことになる。見るだけ見たので、このきのこはゴミ箱に放り込んだ。

[追記] 今朝は雑記を書いた後、コケ標本を観察していて、アップすることをすっかり忘れていた。午後になってしまったが、ドタバタとアップすることにした。


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