2007年6月25日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日小さなキノコを何種類か採集してきたのには別の意図があった。脆くて小さな微小きのこの生ヒダなどを簡易ミクロトームで切り出せるや否やを確認することだ。小さな橙色のきのこをモデルに、切り出しを試みた。Mycena(クヌギタケ属)のSect. Adonideae(コウバイタケ節)かSect. Aciculae(ベニカノアシタケ節)だろうが、今はそういったことは追究しない。
 採取した7〜8本のうち、最小のものは傘径0.8mm(a)、最大のものは1.8mm(b)。これまでだと、こういった脆くて小さなきのこは、ピスに挟んだ途端にペシャンコになってしまうので、実体鏡の下で切り出してきた。大きな方の個体(b)の傘をピンセットで開いて(d)、縦断した(c)。
 はじめに、これ(c)を実体鏡の下で、ヘラ状の棒で押さえて、傘とヒダを一緒に切り出した(e)。いい加減に切ったので、70〜80ミクロンほどの厚みだろう。倍率を上げてヒダをみると、縁シスチジアと側シスチジアがあるらしいこと、ヒダ実質が並列型であることがわかる(f)。

 次に、簡易ミクロトームでの切り出しを試みた。ヒダを1枚だけはずしてピスに挟みたいところだが、実体鏡と先細ピンセットがないとそれは無理だ。実体鏡を使わない前提で行っているので、ルーペを手に、カミソリを縦に入れ、傘の部分を4分割した。
 そのうちのひとつをピスに挟んで、ミクロトームにセットした(g, h)。ピスを縦にまっぷたつに割って、ピンセットで傘の破片をピスに乗せ、位置を整えて、ピス半片をかぶせた後、ミクロトームにセットした。この場合、切れ目を入れたピスに試料を挟むのはまず無理だろう。
 PV製簡易ミクロトームでは、ピス固定圧を微妙に調整できる。脆い試料を潰さないよう、なおかつピスが動かないよう固定した。切り出したものをみると上手くいったようだ。実体鏡下での切り出し(e)と違って、ピスで挟んでいるので、多少変形しているが、組織は潰れていない(i)。 30〜40μmほどの厚さなので、ヒダ実質(j)や傘表皮(k)を見ても、先に実体鏡下で切りだした切片よりも鮮明に見える。しかし、少しでもピス固定圧が強すぎたり、速やかに切り出さずゆっくり刃物をあてたりすると、たちまちヒダだはペシャンコになってしまう(l)。

 実体鏡を持っていなくとも、簡易ミクロトームさえうまく使えれば、脆くて小さなきのこでもヒダや傘表皮の切片を作って、構造の確認をできるということになる。難しいのは、(1) 試料をピスに挟み込むこと、(2) ピス固定する圧の調整、(3) 刃物の種類と使い方、(4) 試料の取り外し、ということになる。これらのいずれかにしくじると、せっかくの薄片も台無しとなる。


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