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ミミブサタケの胞子について、保育社の図鑑には「...(略)... 表面には縦線条模様があるがしばしば不明瞭である」と記される。この表面模様を観察しようと思えば、一般的な水やKOHで封入したのでは、なぜか容易には確認することができない。 7月半ばに、栃木県の塩原温泉で採取したミミブサタケを使って胞子の表面をみた(a)。帰宅後すぐに採取した胞子紋を利用した。間歇的に噴出された落下胞子である。 小形単眼の簡易顕微鏡で最初に、横断面を水(b)、コットンブルー(c)で確認したのち、胞子を低倍率でみた。最初にドライ(d)、エタノール(e)、フロキシン入り1%KOH(f)で、主に胞子表面に合焦すると、いずれも表面の縦線状模様が明瞭に捉えられる。 メインの顕微鏡であらためて、油浸100倍対物レンズでみたのが下段の画像。水で封入した場合、胞子表面付近に合焦すると、全体がぼやけて縦線条模様の確認はほとんどできない。やむなく輪郭部にのみ合焦させた(g)。 次に3%KOHで封入してしばらく放置してみた。案の定、胞子外壁が溶け出してしまった(h)。乾燥標本から戻して観察する場合、しばしばKOHを用いる。この場合、3%程度でも表面模様の観察は難しいおそれがある。保育社図鑑には「コットンブルー非染色性の縦条...がある」と記されている。しかし、コットンブルーを用いても、表面模様の観察は難しかった(i)。 あらためて、ドライ状態(j)と70%消毒用アルコール(k)で確認してみた。胞子表面の縦線条模様を明瞭に捉えることができる。5年前の乾燥標本を使って、3%KOH、水、70%エタノールで確認してみたところ、エタノールで観察した場合のみ、縦線条模様を確認することができた。
一般的に、ドライマウント、つまり水や封入液を一切つかわず、試料にカバーグラスをかぶせただけの状態で検鏡すると、画像が不鮮明になり、輪郭などが曖昧になりやすい。しかし、胞子などでは、封入液を使った場合には見えにくくなるような、表面模様や表面付近の微細構造などはドライの方が鮮明に分かることが多い。 |
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