2007年8月1日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 近くの雑木林(クヌギ、コナラ主体)で2種(?)のアセタケを採取した(a, g)。両者の採取地は数キロメートル離れている。これらを、もし既知種であると仮定すれば、オオキヌハダトマヤタケ、キヌハダトマヤタケ、シラゲアセタケ、ニセアセタケ、キヌハダニセトマヤタケなどが候補にあがる。引き抜いて半切してみると、柄は上下同大で基部に膨らみはない。この時点で、キヌハダトマヤタケ、ニセアセタケ、キヌハダニセトマヤタケの可能性が消えた(b, h)。
 とりあえずカバーグラスにとった胞子紋を顕微鏡でみると、胞子は平滑でこぶや刺はない。この時点で側シスチジアを持たない種であると想定される。2つのアセタケ属の胞子をみると、ほぼ同じようにソラマメ型ないしインゲン豆型だが、上段のアセタケ属は胞子が若干小さく、両者のQ比(縦横比)も異なるようにみえる(c, i)。
 次に両者のヒダを切り出してみると、いずれも側シスチジアはなく(d, j)、縁シスチジアのみがある。縁シスチジアは両者とも、薄膜で棍棒状〜円柱状をしている(e, k)。両者の縁シスチジアの大きさをみるとこれもまた若干の差異がある。両者とも親ヒダの中央部を切り出したのだが、楔形の角度も異なる。下段のアセタケ属のヒダは、基部が厚く急に薄くなる(j)。

 保育社図鑑に従えば、両者とも胞子が平滑であるからクロトマヤタケ亜属となる。つぎに、いずれも厚膜シスチジアを持たず、縁シスチジアは嚢状で頂端に結晶がないから、ザラツキトマヤタケ節ということになる。この節に属するとなると、傘シスチジアや柄シスチジアをみるのは無駄に近いが、念のために傘表皮をみた(f, l)。写真は掲げなかったが、両者とも柄シスチジアはない。傘表皮をみて、両者に差異があるといえばあり、ないと言えば無い。
 この両者(a, g)は同一種と考えたらよいのだろうか、あるいは別種ないし変種であると考えるのがよいのだろうか。胞子サイズとQ比の微妙な差異、縁シスチジアのサイズの違いを、栄養状態の差異、あるいは、若い菌と成熟した菌の差異とも考えることができる。さらには、この程度の胞子や縁シスチジアのサイズ等は、同一種の変異の幅に含まれると考えることもできる。
 いずれも既知種であると仮定すると、上段をオオキヌハダトマヤタケ、下段をシラゲアセタケと考えることもできる。一方、両者ともにオオキヌハダトマヤタケと考えることもできる。保育社の図鑑だけで、この両者を同一とするか、否とするかを決めることはできない。


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