2007年10月2日(火)
 
検索表を使ってみた (3)
 
 腐りきった広葉樹の切り株の脇から、鮮やかな朱色の小さなきのこがでていた(a, b)。きのこをよく知っている人なら、この写真だけから直ちに種名が分かるのだろう。先日のヒメスギタケと同じく、先入観抜きで、保育社図鑑の検索表から種名を探索してみることにした。
 傘径は12〜20mm、表面に粘性も条線もなく平滑、血の赤色、傘肉に近い部分は多少赤色。柄は、4〜5cm×10〜15mm、上下同大で、傘と同色、基部は黄橙色で、中空。ヒダは、傘に上生〜垂生し、やや密で、ロウ質、傘とほぼ同色(b〜d)。
 胞子は楕円形〜ソラマメ形で、6〜8×4〜5μm、膜は薄く平滑、非アミロイド。ただし、落下胞子ではないので、もう少し大きくなるのではないか。ヒダを切り出してみた(f)。子実層托実質は並列型で、子実層はとても厚く、シスチジアはみられない(g, h)。傘表皮は、匍匐状に菌糸がはしり、随所にささくれがある(i, j)。担子器の基部にはクランプを持つものが多く(k)、傘肉や柄には大型のクランプが目立つ(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 帰宅後直ちにカバーグラスに胞子紋をとり、それに基づいて胞子写真などを撮った。しかし、CFカードリーダの暴走で撮影データが完全に破壊されてしまった。再度胞子紋採取を試みたが、ほとんど落ちなかった。やむなくヒダをスライドグラスに押しつけて胞子を採取した(e)。明日は、この観察結果に基づいて、科への検索表からはじめて、保育社の図鑑だけを頼りに、種名まで到達できるものかどうかやってみよう。

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