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後悔先に立たずとはよく言ったものだ。先週の土曜日(6/7)にキララタケとおぼしきキノコ(a, b)を採取した。帰宅後、採取時の紙袋に入れたまま、冷蔵庫の野菜ケースに放り込んでおいた。その時は、夕食後に直ちに検鏡するつもりだった。アルコールが入る前まではそう思っていた。 今朝、冷蔵庫から異臭がするので、開けてみるとキノコを容れた紙袋が元凶だった。キノコの大部分は黒い汁に被われ、カサやヒダはかなり溶けていた。それらの中に、かろうじて原形を保っている株が一つだけあった(c)。カサやヒダは触れた途端に崩れてしまう。 |
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何とかヒダを一枚ピンセットで摘んで、スライドグラスに触れ、直ちにどけると、黒い汁がベッタリついた。この汁には胞子が多量についていた(d)。ついで、おそるおそる、カミソリでカサの一部を切ると、透明で大形の側シスチジアがみえる(e)。実体鏡ではさらに鮮明に見えた(f)。 無駄な抵抗と思いつつ、実体鏡の下で切り出しを試みた。開封したばかりのカミソリでちょっと触れただけでも、簡単に崩れてしまう。カバーグラスを載せると、ヒダは倒れたり、つぶれてしまった(g)。それでも、なんとかヒダ実質(h)や子実層(i)をみることができた。 ヒダを一枚スライドグラスに寝かせてそれを顕微鏡で覗いた。一つの担子器には4つの胞子が整然とついている。担子器同士がぶつかりあわないよう、うまい位置に配置され綺麗な模様をなしている(j)。明瞭に見えるのは上側の面についた担子器上の胞子、ボケているのは下側の面の胞子をみているからだ。油浸100倍レンズにしても、胞子の発芽孔などはよく見えなかった(k)。なお、カサ表面の細胞は類球形の細胞が柵状に並んでいるように見えた(l)。
ヒトヨタケ属 Coprinus のキノコは、採取時に成菌だけでなく幼菌を持ちかえることが必須だ。胞子紋は成菌から短時間で採取できる。5〜10分もあれば十分だ。ヒダやカサ表皮を観察するなら、幼菌に対して試みないとうまくいかない。カサの開いていない幼菌でも、シスチジアやひだ実質はほぼ完成している。一晩も放置すれば、もはや致命的で、詳細な観察は望めない。 |
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