2008年6月12日(木) |
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コガネヌメリタケは美しいキノコだ。先週土曜日(6/7)の日光で採集した株は、翌朝同定に必要な最低限の検鏡だけをしたが、撮影はせず冷蔵庫に放り込んでおいた。今朝取り出してみると、かなり乾燥していたが、まだいくぶん生っぽい状態も残している。カサ表面や柄にはまだわずかながら粘性が残っている。
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ヒダの柄に対する付き方は上生(a)。ヒダの縁は黄金色に縁取られる(b)。ヒダの断面をルーペでみた(c)。実体鏡でみると側シスチジアがあることがよくわかる(d)。カサの部分はかなりゼラチン化している(e)。最初にヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみた(f)。黄金色の縁シスチジアが無数にあり、ひだの他の部分とは明瞭に異なった色をしている。
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ヒダを一枚切り出して縁をみると、紡錘形の縁シスチジアや、子実層に埋まった状態の側シスチジアがある(g)。おやっ、と思ったことがある。これまで、コガネヌメリタケのヒダ実質は並列型だとばかり思っていた。あらためてよくみると、並列型にしては変だ(h)。あらためて複数個体から、何枚ものヒダを切り出してみた。いずれも緩やかな逆散開型をしている(i)。
縁シスチジア(j, k)はいずれも黄金色をしたものばかりだが、側シスチジアは透明のものと黄金色の両者がある(l, g)。透明のシスチジアはフロキシンによく染まるが、黄金色のシスチジアは、フロキシンに染まることなく、あまり色に変化はない(l)。
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予期に反して、担子器の基部にはクランプのないものが大部分だった(m)。基部にクランプを持ったものは比率にして10%もないように感じた。カサの部分は表皮の下はやや厚いゼラチン質が占める(e, n)。カサ表皮は細い菌糸が匍匐状態で連なる(o)。この菌糸には明瞭なクランプがある(p)。子実層やカサ肉などにもクランプはみられる(q)。胞子は、先週帰宅後に直ちに採取した胞子紋から、こそぎ落として水で封入してみた(r)。
クヌギタケ属 Mycena の仲間に、子実層托実質が逆散開型のものがあるとは思ってもいなかった。Singer の The Agaricales には、コガネヌメリタケ節のキノコについて、ひだ実質が逆散開型といったような記述はなかったような気がする。
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