2008年6月17日(火)
 
ありふれたキノコ
 
 今の時期、都会の公園や雑木林、山の中、海浜の防風林など、いろいろな場所に広くみられるきのこにダイダイガサがある。濃色のもの(a)から淡色のもの(b)まで、色や形の変化に富む。こういうありふれて、特徴的なキノコは誰もていねいに観察しようとはしない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日身近な場所で採取したので、久しぶりにダイダイガサを顕微鏡で覗いた。胞子はレモン型で、非アミロイド(c, d)。KOHで封入すると透明になる。ヒダ実質は、類並列型〜類散開型(e)、シスチジアは先細の棍棒やフジの実の鞘のような形をしている(f〜h)。
 カサ表皮を構成する細胞が興味深い。やや厚膜で洋梨のような形をした細胞があるかと思えば、非常に厚膜でヘラのような形の細胞が縦に連なる(i, j)。このヘラのような厚膜の細胞列にはしっかりとクランプがある(j)。カサ肉や柄、ヒダ実質などにもクランプがある(l)。
 担子器の柄(steriguma)は、3%KOHで封入するとほとんど見えなくなってしまった。アルカリに溶けてしまったようだ。担子器と偽担子器のいずれも、基部には明瞭なクランプがみられる(k)。

 類似の紛らわしいキノコが他になく、同定のやさしい、ありふれたキノコについては、ていねいに観察する機会は少ない。胞子やカサ表皮組織などの図が、せっかく図鑑などに載っているのであれば、一度くらいは確認してみるのも面白いかもしれない。


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