2008年7月9日(水)
 
大小二つのアセタケ
 
 アセタケ属 Inocybe は肉眼だけでは同定の難しいきのことされる。肉眼的観察は大切だが、顕微鏡による観察が不可欠だ。もっとも、顕微鏡でみたからといって、種名が明らかになるわけではないが、胞子が平滑か否か、シスチジアが厚膜か薄膜か、傘や柄にシスチジアがあるかないか、などを確認すると、同定には大きな手がかりとなる。
 マツ混じりの林で大小2種を採取した(a, g)。先入観抜きで、胞子(b, c; h, i)、ヒダの先端(d; j)、側シスチジア(e; k)、傘表皮(f; l)を確認してみた。外見は全く違うが、ミクロの姿は、ともにこぶ状の胞子をもち、厚膜で先端に結晶をつけたシスチジアをもち、傘シスチジアはない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 アセタケ属には必ずクランプがあるので(m)、確認は不要だが、柄シスチジアの有無や、担子器基部のクランプの有無、などは確認することになる。両者ともに柄シスチジアはなく、担子器の基部にはクランプがある(o)。写真は掲げないが、両者ともに、傘頂部にも、傘縁にもシスチジアはなかった。柄の上部にも(n)、中部にもシスチジアはなかった。
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 いちおう、ヒダ横断面を切り出したが(p, q)、何もわざわざ切片を切り出す必要はない。縁シスチジアの有無・形をみるなら、ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて、軽く押し潰して縁をみればよい(r)。側シスチジアをみるなら、ヒダの縁を捨て去って、残ったヒダをスライドグラス上で押し潰せば、そこにあるシスチジアは側シスチジアということになる。

 柄の根本は大きなアセタケでは軽い凹頭状、小さなアセタケでは緩やかに膨らむ。保育社の図鑑とスイスの菌類図鑑に準拠して種名を推定すると、大きいアセタケはニセアセタケに近い種(和名なし)、小さなアセタケはコブアセタケかもしれない。


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