2008年7月25日(金)
 
フクロツルタケばかり
 
 昨日朝、埼玉県南部の狭山と川越の雑木林を歩いてみた。このところの猛暑と雨無しのせいか、きのこの姿は非常に少なかった。やたらに目立ったのはフクロツルタケで、老若・大小とりまぜて数十個体に出会った。立ち止まると、たちまち蚊との戦いに悪戦苦闘した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 他のきのこといえば、小型で黄色いテングタケ科のきのこ(a, b)、しっかりした大きなマツオウジ(c)、すっかり菌におかされたムラサキヤマドリタケ(d)、白色のカビに半分ほど冒されたアイタケ(e)、そのそばに転がっていたベニタケ属(f)、などだった。
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ベニタケ科の傘上表皮層の構造について、しばしばアイタケ型という用語が用いられる。偽柔組織の最上部の細胞上に直立したシスチジア状の末端細胞があるものをいう(g〜i)。アイタケをはじめ、ヒビワレシロハツ、カラムラサキハツ、クロチチタケ、クロチチダマシ、ウスイロカラチチタケ、ヒロハウスズミチチタケなどがアイタケ型の傘上表皮層をもつとされる。
 一方、ドクベニタケ節(Russula)、チチタケ節、ツチカブリ節、ヒメチチタケ節(以上Lactarius)では、決してアイタケ型を示すことはないとされる。

 ところが、アイタケ型を自分の目で直接確認したことのある人は意外と少ない。アイタケのカサ表皮を薄切りにすれば、確かに様子はわかる(g)。フロキシンで染めてKOHで封入するとより分かり易い(h)。しかし、カサ表皮を剥がして、KOHで封入しフロキシンで染めてもアイタケ型であることはわかる(i)。要するに薄片を作らずとも、アイタケ型か否かは判定できるということだ。
 アイタケの近くに蹴飛ばされて転がっていたベニタケ属のきのこ(f)で試してみた。最初にカサ表皮の薄片を切り出してフロキシンで染めてみた(j)。次に、傘上表皮を剥ぎ取ってKOHで封入し、軽く押し潰してフロキシンで染めてみた(k)。上表皮の構造が一目瞭然にわかる。アイタケ型に近い構造がみられる。これは、シスチジアや担子器などを観察する場合と同じだ(l)。


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