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9月23日に富士山で採集したヌメリササタケ(a〜d)についてのメモ。アブラシメジ、ナメコ、ホシアンズタケといった強い粘性をもったきのこの検鏡はやっかいだ。ヌメリササタケは傘表面から柄のほぼ全体にわたって、厚いゼラチン質で被われる(c, d)。胞子紋をとると液体でグッショリとなり、液体中には微細な菌が浮遊し、胞子はそこに浮いている(e)。 幸いなことに、ヒダはゼラチン質で被われてはいない。しかし、しばしばゼラチン質が付着してベトベトになっている。まずは、実体鏡の下に傘を置いて、ヒダを切り出してみた。ゼラチン質が邪魔をして試料をうまく固定できず、最初の切片はかなり厚ぼったくなった(f)。 あらためて、ヒダ一枚だけをスライドグラスに載せて切り直した。今度は薄く切れたが、気泡が入ってしまった。しかし、縁シスチジアのあること(g)、側シスチジアがないこと、ヒダ実質が並列型であること(h)は明瞭に捉えられている。側の一部には胞子をつけた担子器も見える(i)。 |
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ヒダの一部をピンセットでつまみ、フロキシンで染めてから3%KOHで封入して押し潰した。担子器の基部にはクランプがみえた(k)。クランプのない担子器もある。ヒダにも傘肉にもクランプは豊富に見られる(l)。縁シスチジアは丸味の強い棍棒状や熱気球のような姿をしている(l〜n)。
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面倒なのがカサ表皮の観察だ。ゼラチン質が邪魔をして薄く切るのは思いの外難しい。新しい両刃カミソリを引っ張り出して、二つに割って、実体鏡の下で「押し切り」をすると、案外うまく薄切りができた(o)。傘表皮は類球形の薄膜の細胞列が薄い層をなし、その上を被うゼラチン質の中には糸状の細い菌糸がみえる(p, q)。糸状の菌糸はいたるところにクランプをもち、基部は嚢状の細胞に繋がる(r)。
ここに掲げた画像は、実体鏡の下で両刃カミソリを使って、「押し切り」したものだが、実は簡易ミクロトームを使うともっと楽に薄い切片を作ることができる。 |
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