2008年10月21日(火)
 
白色のアセタケ類
 
 白い小さなアセタケ類が多数でていた(a, b)。同じ属と思える群から8個体ほど持ち帰った。食事を摂りながら、8つのすべてについて、ヒダをスライドグラスにこすりつけて簡易顕微鏡で胞子を確認した。7つは平滑で楕円形の胞子だった(c)。1つだけコブだらけの胞子をもっていた。他の7つと肉眼的には全く区別できなかった。とりあえず、平滑胞子のタイプのみ撮影した(c〜f)。

 保育社図鑑ではアセタケ属を、まず胞子が平滑か否かで二つの亜属に分けている。平滑胞子ならクロトマヤタケ亜属(アセタケ亜属)となる。次に厚膜シスチジアの有無でいくつかの節に分けている。この白色きのこのシスチジアは厚膜であるから(e)、クロトマヤタケ節となる。
 クロトマヤタケ節に掲げられた白色のきのこをみると、シロトマヤタケ Inocybe geophylla とササクレシロトマヤタケ I. geophylla f. squamosa、ムラサキアセタケ I. geophylla var. violacea の3種が残る。後の二つは前者の品種ないし変種だから、いずれにせよ広義のシロトマヤタケだ。種の解説を読むと観察結果とほぼ一致する。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)

(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 1つだけ混じっていた白色のアセタケは、胞子がこぶ状だからクロニセトマヤタケ亜属(ニセトマヤタケ亜属)となる。クロニセトマヤタケ節に掲げられた白色のきのこには、シロニセトマヤタケ I. umbratica だけが掲げられている。
 種の解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。撮影はしなかったので、ここでは、2004年10月に撮影したデータを掲載した(i〜l)。生態写真は2007年10月に撮影したものだ(g, h)。

 保育社図鑑のシロニセトマヤタケについての解説には「(カサの)中央部は突出する」「(柄の)根本は丸くふくらみ」とある。一方シロトマヤタケの解説には「(カサの)中央部はつねに山形にもりあがる」「(柄の)根本はわずかにふくらみ」と書かれている。さらにこの両者について、「(シロニセトマヤタケは)シロトマヤタケに似て全体が白色であるが、やや大形」とある。

 ここで取り上げた白色のアセタケ属は共に、富士山山梨県側の三合目付近のモミ林に出ていたもので、外見的にはほとんど区別できなかった。たまたま8個体全ての胞子をみたから、両者が混じっていることに気づいたが、一個体だけの胞子しか見なかったとしたら、残りの7個体もすべて同一種と判定していたことだろう。


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