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今年はミズゴケから出るきのこをいくつも採取した。ミズゴケからでるきのこは、ほとんど例外なく柄が非常に長く脆い。柄を切断しないようにホストごと採取するのは結構難しい(b, c)。写真のきのこは、カサ径こそ6〜8mmと小さいが、柄の長さは15cmもあった(a)。 帰宅して最初にするのは胞子紋採取の処置とホストたるミズゴケの同定作業だ。ミズゴケの方は、見るからにボテっとして、いかにもミズゴケ節 Sect. Sphagnum のものだ(d)。ミズゴケ属は7つの節に分けられ、一般に同定が難しいとされるが、ミズゴケ節のものはとても簡単だ。 |
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定石通り枝表皮の螺旋状肥厚を確認すればミズゴケ節なので(e)、あとは枝葉の横断面をチェックすればすぐに種名にたどり着ける。ミズゴケの中では最も簡単な仲間だ。横断面をみると葉緑細胞の様子はオオミズゴケ S. palustre を示している(f)。 きのこの方は、ミズゴケノハナ Hygrocybe coccineocrenata のようだ(g〜l)。ミズゴケから出るきのこは、だいたいが水っぽくて脆く、小さなものが多い。このため、ヒダ(h)やカサ表皮(i)の断面を切り出すのが難しい。乾燥すると小さく丸まってしまい、どこがヒダでどこがカサなのかもわからなくなってしまう。やっかいなきのこだ。菌糸にはクランプがある(l)。 今年はこれまでに、和名のありなしを含めて、12〜15種ほどのミズゴケ生きのこを観察した。いろいろなミズゴケが混成した場所で採取したが、きのこの柄が着いていたミズゴケ個体は、いずれもみなミズゴケ節のものばかりだった。わが国で知られるミズゴケ属は上記のように7つの節に分けられる。しかし、他の6つの節から出ているきのこにはまだ出会っていない。 |
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