防風林のマツ樹皮にウメノキゴケの仲間(Parmotrema sp.)がついていた(a, b)。裂片の先端は丸く、中央部には顆粒状や円筒状のイシディア(isidia 裂芽)が密生し(c, d)、縁にシリア(cilia 睫)はない。裏面の周囲は淡褐色で、中央黒色部からはまばらに偽根(rhizine)がでている(e)。
KOHで地衣体表面はわずかに黄色味が増し、髄部は無変化(f)。偽根を含む面を切り出してみた(g)。偽根はまっすぐで太くて短い(h)。次いでイシディアを含む面で切り出した(i)。イシディアには皮層がある(j)。地衣体の横断面をみると、上皮層、藻類層、髄層、下皮層ときれいに分かれている(k, l)。子器をつけたものはなかった。ウメノキゴケ P. tinctorum かもしれない。
地衣類の正確な同定には地衣成分の観察が必要とされ、呈色反応、顕微結晶検出、ペーパークロマトグラフィーなどを利用するらしい。呈色反応と顕微結晶法は楽にできるが、肝心の試薬類がほとんどない。KOH、グリセリン、エタノール、アセトン、アニリンなどはキノコでも使うからよいが、ピリジン、キノリン、o-トルイジン、o-アニシジン、パラフェニレンジアミン、次亜塩素酸カルシウム等はない。入手困難なものばかり、筑波詣で、千葉詣で・・・かも。
もっともキノコの同定でも、特定分野については、それなりの試薬類、グアヤク、αナフトール、濃硫酸、ラクトフェノール、コットンブルー、コンゴーレッド、硫酸第一鉄、等々が必要となるから、特に地衣だけが特殊な試薬類を必要とするわけでもなさそうだ。
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