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川越市の保護林で見慣れないイグチが7〜8個体でていた(a)。コナラやスギの落ち葉と似通った色であやうく踏みつぶすところだった。焦げ茶色のカサ、黄色い肉、わずかな青変性、柄上半に繊細な網目、柄下半に粒点がある。ルーペでみると孔口が濡れたように光る。図鑑類には掲載されていないと思われるイグチだったので3個体ほど持ち帰ってきた。
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しっかりして管孔部も硬かったので、胞子が成熟していないのではと懸念したが、2時間ほどで多量の胞子紋ができあがった。胞子紋は褐色。管孔部を縦に切り出してみた。托実質はヤマドリタケ亜型。管孔部の先端を見て驚いた。薄膜で熱気球のような縁シスチジアが密生している。孔口部をルーペでみたとき濡れたように輝いたのは、この縁シスチジアのためだったようだ。 縁シスチジアが球形〜楕円形で、柄をもち全体として熱気球のような姿をしたイグチなんて見たことがなかった。何かちょっと違うのではないか、という妙な直感は当たっていたようだ。クランプはなく、カサ表皮は直立気味で色素を帯びた菌糸からなる。 イグチのことはほとんど何もわからないが、縁シスチジアが類球形のものといえば、知る限りでは青木実氏によるクロアミアシイグチ(青木新称 Boletus sp.)しかない。そこで、名部編『日本きのこ図版』第五巻(2008 日本きのこ同好会2)を開いてみると、183〜184p.に掲載されていた。図版番号はNo.1089。図版には、「1989-VIII-12、所沢市北中、コナラの根元で2個体採取したが、1個体はすでに、くずれていた」とある。記載にそって他の形質状態を確認していくと、胞子は非アミロイド、柄シスチジア、肉眼的呈色反応などもほぼ記載どおりだった。
熱意あるアマチュア研究者であれば、普通はこの時点でさらに詳細な記載をすると同時に、文献探索を開始し、新種ないし新産種として論文発表する準備にかかることになる。ここ数年、そういったことができる「ハイアマチュア」が一昔前には考えられないほど増えた。 |
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