2011年10月18日(火)
 
胞子の形が面白い
 
 都内の社寺林、川崎市の緑地、筑波の広葉樹林などなど、今の時期あちこちでウラムラサキシメジがよく出ている。そうどこにでも頻繁に出るきのこではない。今年はウラムラサキシメジのあたり年なのかもしれない。他に類似のきのこもなく、ヒダの色を見れば簡単に見分けることができるとされている。だからいちいち顕微鏡で覗く好き者は少ない。
 ところが、このきのこの胞子はちょっと特異な姿をしている(b〜f)。図鑑などには「十字形」あるいは「類三稜形」などと記されたものが多い。ヒダは紫色でも胞子紋をとってみると白色だ。紫色の原因はヒダの子実層にある紫色の色素を帯びたシスチジアだ。成熟のピークを過ぎるとシスチジアの色素も褐色になる。そのころにはヒダの色も褐色となる。
 ヒダを一枚スライドグラスに寝かせて縁をみると縁シスチジアがみえる(g)。写真は省略したが、合焦位置を変えると紫色の側シスチジアが無数にあることもわかる。ヒダ断面を切ってみても、低倍率ではわかりにくいが(h)、倍率を上げると紫色のシスチジアが多数あることがわかる(i)。縁シスチジア(j)も側シスチジア(k)も姿はあまり変わらないが、どちらかというと側シスチジアには面白い形をしたものが多い。担子器の基部にはたいていクランプがある(l)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 きのこのプレパラートを作る場合、水で封入したときには元の色が残っていても、KOHで封入すると脱色されてしまい透明になってしまうものが多い。でも、このきのこの場合は、KOHで封入してももとの鮮やかな紫色はそのまま残っている(i, j)。フロキシンを加えても紫色の痕跡は明瞭にわかる(k)。胞子だけでも一度は覗いておいて損のないきのこだと思う。

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