家の近くの杉林で広葉樹の腐朽木から子嚢菌がでているのを確認したのは4月15日だった。20日になるとかなり大きくなった(a)。柄はほとんどないか、あってもとても短かった(b)。まだ胞子は全くできていなかった。しかし、側糸の隔壁中央になにか丸いものが目立った(c, d)。ウォロニン小体(Whronin bodies)かもしれないと思ったが、ここまで顕著な姿をみたのは初めてだった。材ごと自宅に持ち帰って成長を待つつもりで縁側に放置しておいた。
5月1日になるとさらに成長し、白色の柄も伸びてきた(e, f)。茶碗の部分を縦断してみると、子実層、子実下層、托実質、托外皮などの様子がわかる(g)。いくら見ていても、息を吹きかけても胞子の放出は覧られなかった。一部の子嚢には胞子ができはじめていたが、子実層をみると、胞子は未成熟で、大きさがまちまちな楕円形・平滑なものばかりだった。
さらに今朝再び確認すると、成熟した胞子がかなり見られるようになってきた(h)。子嚢は非アミロイドで(k)、胞子は表面が編み目状隆起で覆われていて、嘴状突起のようなものはない(i, j)。3%のKOHで封入するとたちまち表面模様の部分は消失してしまった(l)。さらに、未成熟で若い子実体の側糸にみられたウォロニン小体のような構造はほとんど目立たなくなった。ただ、そのつもりで隔壁中央をじっくりと見ると、小さな丸い構造があるといえばある、ないといえばない、かのように見える。それにしても、成熟までにとても時間がかかるきのこだった。
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