2012年5月16日(水)
 
乾燥標本から:ハタケキノコ
 
 先日自宅借家の庭に散生していたハタケキノコ(a〜c)は胞子紋を取ったのち、乾燥器にかけたまま放置してあった(d)。標本箱に納める前に検鏡した。乾燥したきのこはちょっと触れると簡単に崩れてしまう。何とかヒダを一枚取り出してスライドグラスに寝かせて検鏡し縁を眺めた。多数の胞子に邪魔されて縁シスチジアの有無や形態を確認することはできなかった。
 ヒダの断面を切り出して先端を見たがやはり縁シスチジアの様子は全くわからない(f)。ヒダ実質は並列型で(g)、菌糸にクランプがあることは確認できる(h)。押しつぶした訳でもないのに、なぜか胞子がやたらに壊れている(e)。ヒダをフロキシンで染めてKOHで封入し押しつぶしてみると、担子器(i)、縁シスチジア(j)が見つかった。かさ表皮の様子は水(k)で封入してもKOH(l)でも明瞭に捕らえることはできなかった。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 フミヅキタケ属やヒトヨタケ属などのように胞子を多量に放出するきのこでは、エタノールなどで胞子をある程度洗い流してからヒダの縁を観察しないと、シスチジアの有無や姿形などを確認するのが難しい。担子器と同サイズのシスチジアをもつハタケキノコなどは特にそうだ。

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