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戸隠森林植物公園で観察したきのこである。最初は真っ黒な姿が草の陰に見えて、ヌメリガサ科きのこの変色したものか、なにかがバクサレたものかと思った。同じものがカラマツ林に群生しているのを発見し、よくみればすべてバクサレているわけでもなく変色しているわけでもなかった。子実体の断面は赤紫色で時間が経過してもさらなる色の変化はみられなかった。
胞子紋は紫色を帯びている。胞子は小型でこぶこぶがある。かさ表皮(f)、柄の表皮(g)を各2か所観察してみたがシスチジアはみられなかった。かさ肉も柄の肉にもまるで乳管のような菌糸(h)が走っているがもちろんチチや分泌物はみられない。ひだのシスチジアは褐色の色素を含むもの(l)と無色のもの(k)があり、先端に結晶の付着しているものがまれにある(m)。クリソシスチジアは見られなかった。側も縁もシスチジアは少ない(i, j)。クランプは各所で観察でき、担子器にはベーサルクランプもあるようだ(o)。形態からはまるでムラサキフウセンタケなどに近い仲間の様にも見えるが、胞子の形態などからアセタケ属のように思える。 |
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[補足] このきのこは、園内のカラマツ園地および高台園地の遊歩道脇の斜面に多数発生していた。当初アカヤマタケ属などのきのこが乾燥しきって黒ずみ、雨で再び柔らかくなったのかと思った。ところが触れてみるとよくしまった肉質で新鮮そのものだった。 長岡市の勉強会では、ムラサキフウセンタケなどに近いフウセンタケ属説、未知のイッポンシメジ属説などがでた。カサ頂部に凸部や中丘などなく、逆に凹んでいることもあって、アセタケ属説はでなかった。対物40倍レンズで胞子を見たところ、イッポンシメジ属の胞子のように見えた。そこでとりあえずイッポンシメジ属の可能性が高いとして持ち帰ってきたものだった。 帰宅後改めて油浸100倍対物レンズで検鏡したところ、イッポンシメジ属の胞子とはまるで違っていた。胞子の一端に尖った嘴状の部分がなく、テトラポットのようなコブ状だった。カサも柄も一面に繊維状の鱗片に被われている。なお、柄の基部に膨らみはない。 (I. A.) |
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