2013年8月28日(水)
 
コビチャニガイグチとオクヤマニガイグチ
 
 コビチャニガイグチとオクヤマニガイグチに関するメモ。両者は発生環境も肉眼的特徴もとてもよく似ている。市販の図鑑類によれば、以下の諸点が顕著に異なるとされる。

  苦み 肉の変色性 胞子:サイズ(保育社図鑑)
コビチャニガイグチ苦みなし褐変する類卵形:6〜7.5(〜9)×4〜4.5μm
オクヤマニガイグチ苦い変色しない紡錘形:8.5〜14×3.5〜4.5μm

 先日比較した標本に関していえば、(1) 苦みは両者ともほとんど無かった。(2) 肉の変色性については、長時間放置するとコビチャニガイグチの断面がわずかに褐変したが、赤変とか褐変というほどではない。また、オクヤマニガイグチの断面もわずかに褐変した。
 多くの図鑑では触れていないが、このほか両者で差異を感じたものがある。
 (3) コビチャニガイグチのシスチジアにはKOHで褐変するものが多く含まれるが、オクヤマニガイグチにはそういったシスチジアはなかった。
 (4) コビチャニガイグチの孔口やはオクヤマニガイグチの孔口よりやや大きかった。
 いずれか迷ったら、最大の決め手は胞子の形状かもしれない。変色性や苦みはあまり当てにならない。したがって、現地で種名を特定することは難しい。

[参考] 原記載とホロタイプ
コビチャニガイグチ Tylopilus otsuensis Hongo
 滋賀大学教育学部紀要、自然科学 16巻60ページ、1966年、Holotype: TNS-F174776
オクヤマニガイグチ Tylopilus rigens Hongo
 植物研究雑誌(The Journal of Japanese Botany) 54巻303ページ、1979年、Holotype: TNS-F174773


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