あまりの大きさに「あっ!赤いチャワンタケの仲間」と思ったが落ち着いて見ると縁に長い毛があった。今まで見てきたアラゲコベニチャワンタケ仲間の大きさはほとんどが1cm以下であったが、今回のものは径1.8cm平均であった(c)。小さな流れにまたがった枝の片側に大きいものがあり(a)、同じ枝の流れをはさんで反対側には通常の大きさのものがあった(b)。あまりの大きさの違いに種が違うのかと思ったが、毛や胞子の形状から同一種としてよいようであった。
胞子は楕円形、微疣があるが水で封入したときはわかりずらい(d)。コットンブルーで封入すると疣は独立したものと一部繋がっているものがあり、網目は作っていない(e)。フロキシンで封入しても疣はわかりずらい(f)。子嚢先端はメルツァー試薬で青変しないが、側糸が紫に変色する(g, h)。縁の毛は長いものが多く密集しているが托外皮の毛は短く散在している(i, j)。毛の根元は縁の毛では多分岐のものが多いが(k)、托外皮の毛は単根が多いようだ。子嚢果の構造を見ようと生標本からの切片作りをしたが容易ではなかった。半乾燥状態でも鮮明な切片は作れなかった(l)。どうやら托髄層は絡み合い菌組織、托外皮層より薄いということだけはわかった。アラゲコベニチャワンタケS. scutellata よりS. crinita (和名はない)に近いように思われる。 (Y. A.)
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