アラゲコベニチャワンタケの仲間 | |||||||||||||
7月30日に茨城県北茨城市関本町小川のブナ林で採取した(a)。昨年も同じ場所で採取しているが顕微鏡観察が充分できず同定できなかった。 縁の毛は密集し短い(230〜430μm)、毛の根元は多分岐ではない(b, c ,d)。子嚢は根もと近くで細くなり、8胞子性、胞子が一列に並び、メルツァー試薬で先端は青変しない(e, f, g)。胞子表面の模様はめだたないが小さな疣、時に繋がるが網目は作らない(h, i)。側糸は糸状、頭部の形状は少しずつ違いがあり、隔壁あり、基部で分岐するようだ(j)。托髄層は絡み合い菌組織(textura intricata)と伸長菌組織(t. porrecta)からなるようだ(k)。托外皮は円形菌組織(t. globulosa)と多角菌組織(t. angularis)からなる(l)。シューマッハのモノグラフ(Opera Bot. 101:90, 1990 "The genus Scutellinia (Pyronemataceae))で検索してみると Scutellinia nigrohirtula に落ちた。シューマッハも群馬県の菅沼で採取している。 今シーズンはこの仲間を12か所で採取している。しかし、検索表ですんなり落ちるものはなかなかない。 (Y. A.) |
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[最近の観察手順] 子実体の形態を記録後、胞子紋を採取。できるかぎりカバーグラス2枚に採取。水封入とコットンブルー染色用であるが、胞子紋が上手く採取できないこともままある。 縁の毛の長さは実体鏡下で定規を用いて概寸を測定。さらに縁の毛を保存するように子嚢盤の縁をカットして顕微鏡の対物4倍レンズで撮影し、フォトルーラーで計測している。このプレパラートをやや押しつぶして毛の形態、隔壁、壁、根元の分岐の確認をしている。ついで、この時にできるだけ子嚢と側糸の観察もしている。托外皮の毛の長さ、形態は子嚢果の構造観察時の切片で観察している。 子嚢果の構造観察のための切片は生標本をやや乾燥させ、実体鏡下で作成していることが多い。切りにくい時はさらに乾燥させ、簡易ミクロトームを利用している。しかし、乾燥させすぎると托髄層の構造がますますわかりにくくなって苦労することが多い。 (Y. A.) |
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