ヤケイロタケとは何とも妙な名前をもらったものだ。どうみたって子実層托の色は焼色には見えない。成長の最盛期にはきのこ全体に弾力性があって(a, b)、カサ裏面は中央部が暗紫褐色で縁は白色だった(c)。しかし、ちょっと古いきのこは中央部が暗色で(d, e)、持ち帰って数日もするとすっかり黒色になっていた(f)。さらに乾燥すると縁が内側に丸まって、野外で見た時とはまるで様相が異なっていた(d)。一晩放置しても胞子紋は全く落ちなかった。数日前家の近くで出会ったヤケイロタケはやけに白かった(g〜i)。しかし持ち帰って半日もするとカサは褐色を帯び、子実層托は暗色になっていた(j)。孔口などの様子はとくに変わらない(k, n)。
同じ属のヒメモグサタケと比較すると全体に小ぶりで肉も薄い。さらにカサ裏面が極端に黒く変色してしまうことも、ヒメモグサタケとは随分違う。孔口は5〜6個/1mmで(k, n)、カサ肉と管孔部との間には黒い境界線があり、ちょっと古くなったり乾燥すると境界線と管孔は同じように黒色になってしまう(l, m)。菌糸構造は一菌糸型で大きなクランプが沢山ある(o, p)。子実層部を見ても明瞭に担子器とわかるものは見つからなかった(q, r)。胞子も見つけられなかった。
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