2021年6月22日(火)  庚申山:下山時落石の直撃で負傷 (2)
 梅雨の時期の庚申山に登って、コウシンソウに逢えないのは何とも悲しい。今回がまさにそういう状態になってしまった。というのも、下山時にコウシンソウが群生する岩壁に行ってそこで鑑賞し撮影するつもりだったからだ。
 落石の直撃で体が跳ばされたあと、不自由な体で30分ほどかけて何とか登山道に戻り、上方に向かって「誰だ? 石を落とした奴は?」と何度か怒鳴ったが、全く反応がなかった。自然落石にしては不自然なので、人ではなく獣の仕業かもしれない。

 登山道に戻ってすぐに感じたことは、この体で果たして無事に庚申山荘まで下山することができるのだろうか、だった。山荘までは距離こそ短いが垂直に近い岩壁の厳しい径が続く。右腕がほとんど使えず、指は動くが全く力が入らない。両脚は打撲で何もせずとも痛い。少し歩くとこむら返りのような状態となり突っ張ってしまう。
 そこで、一歩一歩これ以上ないほど慎重にゆっくりと歩を進めた。登りの数倍の時間がかかったが、庚申山荘が見えたときは助かったと思った。ここから下は困難な岩場はもうない。ただ、少しの振動でも猛烈な痛みに襲われるのが辛かった。

 一の鳥居までの行程も登りの倍以上時間がかかった。その後の林道歩きは地獄の苦しみだった。危険な岩場や振動の多い山道を降りて、ほっとしたことによって全身の痛みがより一層激しくなったようだ。車に戻っても運転席に腰掛けて30分ほど呆けていた。
 まず頭をよぎったのは、果たして安全に自宅まで運転できるのだろうかどうかだった。運転代行を呼ぶべきかどうか迷った。幸い左腕や左手、右足は正常につかえる。左足が思い通りに動かないが、オートマ車ゆえこれは運転には支障ない。
 この状態で銀山平の登山者専用駐車場まで恐る恐る走ってみた。何とか行けそうだ。ライトの点滅ができないので、点灯しっぱなしで走ることにした。右左折の合図を出すのに苦労したが、何とか無事に帰宅できた。右手が使えずドアを開けるのに難儀した。
 太極拳サークルの仲間には、余計な不安を抱かせないように、車を放置してタクシーで帰宅し、帰宅後に運転代行に車を運んでもらったと話しておいた。片手運転と聞いただけで過剰な反応を起こしかねないメンバーへの配慮からだ。

 今回の件で単独登山の危険性を痛感したが、仲間と一緒に歩いていたとしても、下山時の苦しみは変わらない。単独で歩くということはすべてが自己責任だ。安易にヘリコプターや救急車を要請すべきではないと思っている。這ってでも動ける限りは今後とも救急要請をするつもりはない。全く動けなければそのときは人生にバイバイだ。



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