back

きのこを楽しく学ぶために


 これは私たちの拙い経験から「きのこを楽しく学ぶために」参考になりそうなことを列挙したものです。この話題はしばしば照会があるので、現時点での暫定的な回答のつもりです。ベテランの方、学問的アプローチに慣れている方にはあまりにも常識的なことばかりでほとんど役に立たないかと思います(写真をクリックすると大きなものになります)。

きのこ図鑑は定評のあるものを何種類か手元に置こう
 野生のきのこはなかなか典型的な姿をみせてくれません。色にしても形にしてもとても変化に富んでいます。そのため、1冊のきのこ本からだけでは名前を突き止めることは困難です。ちなみに、数冊のきのこ図鑑を比較してみましょう。たとえば、索引からウラベニホテイシメジを拾って該当ページを開いてみます。写真を見比べただけでもかなり違った姿をしているのではないでしょうか。解説を見るとさらに分からなくなります。次にマルミノノボリリュウを索引からさがしてみてください。多分載っていないでしょう。そんなときは海外の定評のある書籍を開くとよいでしょう。
 きのこに関する図鑑は非常に沢山あります。できれば、初版発行年が古くて何度も版を重ね、その間に何度も改定が行われているものを数冊手元にそろえるとよいでしょう。そして盲信は禁物です。どんな良書にも誤植もあれば、写真の差換え間違いはかならずあるものです。

分類で基本になる書籍はやはり「原色日本新菌類図鑑1・2」
 古いとか現在は考え方がずいぶん変わってきた、などといわれることもあるようですが、何だかんだといっても、現在、きのこの名前を判定(種の同定)しようと思ったら基本になるのは、この図鑑2冊だと思います。図版ページは写真ではなくていねいに描かれた絵です。そして解説ページを開いていざ調べようとすると、最初に難解な検索表にぶちあたります。多くの人がここで躓いてしまうといいます。いきなり顕微鏡所見がでてくるからです。この検索表を読み解き、本文の解説を理解するにはいくつかの基礎的理解が必須です。
 私たちも最初ここで躓きました。顕微鏡や試薬は手元にあって日常使っていました。にもかかわらず、でした。そんなとき「キノコの分けかた入門」1995年(吹春俊光講師)を受講して目からうろこが落ちました。いまだに貴重なテキストです。
 また、国内の書籍だけで解決できないことはかなりあります。そして、海外の図鑑や論文などに目を通すと分からない考え方やテクニカルタームが頻繁にでてきます。そんなとき、「Ainsworth & Bisby's DICTIONARY OF THE FUNGI 8th Edition」と「日本菌学会編 菌学用語集」はとても頼りになる味方になってくれることと思います。

各地のきのこ愛好会の採取会に参加するのはとても有効
 各県にひとつは「××きのこの会」といったアマチュア愛好家の会が必ずあります。そしてそれらの多くはしばしば採取会などをやっています。臨時会員、一日会員ということで非会員でも参加できることが多いようです。こういった採取会などに参加すると自分が採取したきのこを鑑定してもらえたり、きのこの生える環境などについての有用な知識を得ることができるでしょう。そして会の雰囲気が気に入ったら入会するのもよいかもしれません。
 採取会に参加して鑑定してもらおうとおもったら、いくつかの注意が必要です。そのきのこについての付随情報を適切に伝えることです。どんな材から生えていた、周辺は針葉樹林か広葉樹林か、単独で生えていたのか群生していたのか、などなどです。
 また、鑑定してもらう場合でもあらかじめ上記図鑑類などにあたって、自分なりにキノコの名前の検討をつけておく(種の同定)ことは大切です。そのためにも信頼できる図鑑を必ず持参していくことは当然です。

博物館で行われている菌類講座などの受講は非常に役立つ
 きのこの会に加入するといろいろな情報が得られることは確かです。また同好の仲間を得るという楽しみも得られるかもしれません。でも、より掘り下げてきのこ、あるいは菌類について学ぼうと思ったら、博物館などで定期的に行われている菌学講座に参加するとよいでしょう。菌学教育研究会(国立科学博物館と共催)やら千葉県立中央博物館などでは年に数回、菌学講座を開いています。講師はわが国の最高レベルの方々ばかりです。これを受講しない手はありません。また、受講時配布されるテキストは後々まで非常に役立つものばかりです。
 意欲さえあれば誰でも参加できます。きのこ観察には必須の顕微鏡などについても初歩的なところから手ほどきしてもらえます。平日に行われる講座が多いのですが休暇をとってでも受講するだけの価値はあります。

基礎的な勉強をする上で非常に役立つ(不可欠の?)講座とテキスト
 以下に列挙したのは菌学講座で使われたものばかりですが、テキストだけ独立して読んでも非常に内容が充実しています。市販の書籍や図鑑にはとても真似はできません。専門的な内容のものは抜きにして、手元にある最新のものを掲載してみました。何度読み返しても陳腐化しないすぐれた内容です。ぜひとも入手して目を通すことを勧めます。いずれも、照会すれば1部1000円程度で入手可能と思います。

 千葉県立中央博物館:菌学講座テキスト
「キノコの分けかた入門」1995年(吹春 俊光氏)…これは入手不可かも?
「きのこの顕微鏡観察入門」2001年(同上)
「ハラタケ目の分類」2000年(同上)
 菌学教育研究会(国立科学博物館と共催):菌学講座テキスト
「菌学概論1」平成11年(徳増 征二氏)
「菌学概論2」平成13年(土居 祥兌氏)
「担子菌類ハラタケ目の分類」平成13年(村上 康明氏)
[参考] 科博菌学講座テキスト一覧
(2001年2月19日記、3月26日追記)