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2017年4月23日() つっかえ棒としての側シスチジア
 日光の名勝憾満ケ淵の遊歩道で、カラカラに乾燥して残っていた束生するキノコの一部を紙袋に入れて持ち帰った(a, b)。ヒダはすっかり乾燥して黒光りしていた(c)。手で触れるとパリパリになって割れる。とりあえず、ヒダの一部をピンセットでつまみ出して、フロキシンで染めてみた。すると薄膜で大きなシスチジアのようなものがみえた(d)。胞子は黒褐色で発芽孔がみえる(e)。肉眼的にもほぼ明らかだが、胞子をみるとこれはヒトヨタケで間違いなさそうだ。
 乾燥しきったヒダ(f)を湿らせたティッシュをそえてタッパーウェアの中に入れると30分ほどで湿ってきた(g)。ヒダに触れると割れこそしなくなったが、ドロドロになって潰れてしまう。こうなると切片を切り出すのは凍結乾燥でもしないかぎり無理だろう。
 そこでカサとヒダが比較的しっかりしている部分を厳選して、ヒダを一枚取り外してみた(h)。ヒダの縁をフロキシンで染めて顕微鏡で見たが、縁シスチジアらしきものは見えなかった(i)。どうやらヒダの先端はすでに溶けてシスチジアごと消失してしまったようだ。
 次いで柄に近い部分でこれまた比較的しっかりした部分から複数のヒダを含める形で切り出してみた。高倍率のルーペでみても、隣接するヒダの間に透明で大型薄膜のシスチジアがあることがよく分かる(j)。顕微鏡でも覗いてみた(k, l)。透明なつっかえ棒は、明らかに隣接するヒダ同士が密着しないように支えている側シスチジアのようだ。
 念のためにカサ表皮を見ることにした(m)。淡色でちょっと見には薄切り可能かと思われたがやはり無理だった。剃刀の刃をあてると簡単に崩れてしまう。そこでやや厚切りのままカサ表皮をみた。菌糸が平行に走っている(n)。表皮部分だけを引きはがして押しつぶしてもみた(o)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
()
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
 ヒダが楔形ではなく基部から先端まで同じ厚みを持ったヒトヨタケのなかまでは、隣接するヒダ同士が密着するのを防ぐ役割も兼ねた大型の側シスチジアが発達したキノコが多い。たいていは20倍程度の高倍率ルーペで覗くと、この側シスチジアを確認することができる。