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2017年4月26日(水) カシタケの胞子で遊ぶ
 いわき市でこんな時期になってもまだ出ていたカシタケを2本ばかり持ち帰ってきた(a, b)。本来は3月から4月前半頃に最盛期を迎える。乾燥気味で小さな虫が多数入っていた。
 数時間胞子紋をとると、微細なウジ虫も多数落ちてきた。虫をよけて胞子をメルツァー試薬で封入した。初めに対物40倍レンズで(c, d)、ついで対物油浸100倍レンズで撮影した(e, f)。それぞれ胞子表面(c, e)と輪郭部(d, f)に合焦したものだ。なお、メルツァー試薬の代用として使われるうがい薬のイソジンは担子菌には無力だ(雑記2003.12.19)。イソジンで封入しても、水封(g, h)とほとんど変わらず視野全体が黄色味を帯びるだけだ。
 本来そのために開発された試薬だから当然だが、ベニタケ類やチチタケ類の胞子表面模様の観察にはメルツァー試薬に勝るものはない。フロキシン(i, j)やコットンブルー(k, l)で封入しても、水封したものと何ら変わりない。無駄な労力といったものだ。
 対物レンズの40倍と油浸100倍の画像を表示したが、胞子表面の様子の観察やサイズの計測を正確に行おうとすれば、是非とも油浸100倍レンズで行うのがよい。40倍レンズでは誤差が大きくなる。もっとも、胞子サイズが一割程度違ったからといって、別種であると騒ぎ立てるのは愚の骨頂だ。種によって差異はあるが、一割程度のバラつきなら殆んどの種にある。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 胞子遊びだけやって捨てるのも忍びないので、虫だらけでヨレヨレになったヒダから断面を切り出してみた(m)。簡単に崩れてしまい、うまく切り出せなかった。先端を見てもシスチジアらしきものがみあたらない(n)。だからといって、縁シスチジアがないと判断するのは稚拙すぎる。やや疎なシスチジアを避けて切片を切り出してしまったのかもしれない。
 そこでヒダを一枚取り外してその縁を見ることにする。厚ぼったいヒダなので画面が真っ黒で縁の様子は全くわからない(o)。そこで無理やり倍率を上げる。水が多すぎるので全体が不鮮明となるが、どうやらシスチジアらしきものがみえる(p)。カバーグラスの縁からフロキシンを注入してみる。すると水だけの時よりは若干はっきりと縁シスチジアの存在を確認できる(q, r)。
 ついで、ヒダの縁のあたりだけをつまみ出して、コントラストを強くして見やすくするためにフロキシンで染めてから、KOHで封入してカバーグラスの上から軽く押しつぶすと、組織がバラバラになる。バラバラになったところで、なるべく典型的な姿のシスチジア(s, t)や担子器(u)を探してみる。ヒダの先端付近には面白い形の細胞もしばしばみられる(v)。
 種によってはカサ表皮や柄シスチジアの形態も重要だが、ことカシタケに関しては、観察するだけ無駄だ。無駄を承知でカサ表皮とカサ肉を一緒に薄く切り出した(w)。倍率を上げてもカサ表皮の様子はいまひとつはっきりしない。細い菌糸が平行気味に匍匐しているようだが、そういった姿は捉えられなかった(x)。
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
 日光に転居してからは二度目の春を迎えるが、この地ではいまだにカシタケは見ていない。スダジイがないわけではないので、きっとどこかで発生はしているのだろう。