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2017年7月4日(火) Lentinellus (ミミナミハタケ属) のきのこ
 雨上がりの公園で群れてでていたミミナミハタケ属のきのこに出会った。なんとなくこれまで見てきたものと少し違うような気がして持ち帰ってきた。
 カサの基部は色も濃く、ちょっとみには毛があるかのようにみえるが(a)、その部分をルーペで見ると毛は生えておらず、薄い泡の膜のようになっている(d)。偏心して材から出ているが柄はない。現地で高倍率ルーペでヒダをみてもシスチジアらしきものはみえない(e)。
 胞子は類球形(g)でアミロイド(h, i)。表面は微細な突起に覆われる。強靭なヒダの断面を切り出してみた。まず水で(j)、ついでフロキシンを加えた水で(k)、最後にメルツァー試薬で(l)封入してみた。このため、結局三回ほど薄片を切り出した。丈夫なので切り出しは楽だったが、逆に薄切りにするのが難しかった。
 切り出したヒダの先端部分を次々に拡大してみたが、側にも縁にもシスチジアらしき構造物はみられない(m, o)。またメルツァー試薬で封入したときに、ひだ実質はごくごくわずかにアミロイド反応をみることができた。しかし、ていねいに見ないとヒダ実質は非アミロイドのように見える(l)。いずれにせよ、ひだ実質のアミロイド反応は非常に弱い。
 菌糸構造はディミティック、つまり二菌糸型で、骨格菌糸の壁はとても厚い。油脂状の内容物をもつ菌糸が縦横に走っている(o)。ヒダ切片をそのまま水封したところ、切片の周囲に小さな油滴粒が多数付着して観察の邪魔になった(j)。そこで、切り出した切片はいったんエタノールで洗ってから、あらためて水なりメルツァー試薬で封入するとすっきりした(k, l)。
 フロキシンで封入したときに、薄壁の原菌糸と子実層は赤色に染まるが、骨格菌糸は染まらない。原菌糸には、薄壁のものにも厚壁のものにも、どちらにもクランプがある(q)。子実層をじっくり探してみたが、担子小柄をつけた状態の担子器を見つけられなかった(r)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 子実体、(c) 裏面、(d) カサ中央部付近の拡大、(e) ヒダ部の拡大、(f) 断面、(g) 胞子:水封、(h, i) 胞子:メルツァー、(j) ヒダ断面:水封、(k) ヒダ断面:フロキシン、(l) ヒダ断面:メルツァー、(m) ヒダの先端、(n) ヒダの中央部、(o) ヒダの先端:さらに拡大、(p) 菌糸型、(q) クランプがある、(r) 子実層の菌糸

 保育社図鑑の検索表(p.36)にあたってみると、イタチナミハタケ Lentinellus ursinus に近いが、なにかちょっと違う。まず、カサの基部に毛がない。またヒダ実質はごく弱いアミロイド反応を示すとはいっても、低倍率では非アミロイドにしかみえない。イタチナミハタケのヒダ実質をメルツァー試薬で封入すると、たいていは顕著なアミロイド反応を示すものだ。
 でもまぁ、このきのこはイタチナミハタケのバリエーションなのだろう。形こそ大きく育っているが、全般的にとても新鮮でまだ若い菌のように見える。きっと環境と成長段階によって、カサ基部の毛やらヒダ実質のアミロイド反応にはかなり幅があるのだろう。