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2017年8月20日() フサタケ属でもハナビタケ属でもなさそうだ
 さる8月17日に矢板市の県民の森を散策した折に、腐食土の上に珊瑚状のきのこがやたらに沢山でていた(a)。その前の週に歩いた時にも気づいてはいたが、その時は無視して歩いていた。フサタケかその近縁のきのこだろう、くらいの軽い認識だった。しかし、あまりに頻繁に群生に出会うので、一部を持ち帰っていた。ようやく今日これを覗いてみた。
 先端近くのやや細くてざらついた部分(b)を輪切りにしてみた(c)。二叉から三叉あるいは十字に分岐した厚膜の菌糸に邪魔されてその他の部分はよくわからない(d)。次いで中間部のやや幅広の部分を縦切りにしてみた(e)。子実下層から子実層托の部分にはやはり分枝した菌糸が満ち溢れている(e)。倍率を上げると子実層らしき構造があるが(f)、担子器などは分からず、鋭く尖った長い厚膜菌糸がシスチジア状に突出している(g)。
 こりゃあKOHでバラしてみないと、子実層や担子器などの様子はわからないだろうと踏んで、とりあえず先にとっておいた胞子紋から胞子を覗いてみた。楕円形で(突出部を含めて)4.5〜5μmほどの小さなもので(h)、非アミロイド(i)。子実層付近の微細片をフロキシンで染めてKOHで封入して押しつぶしてみると、細長い担子器が見えたが、シスチジアの有無などはよくわからない。
 菌糸構造は二菌糸型で、原菌糸にはクランプはない(k)。隔壁がなくて厚壁の菌糸はいずれも、頻繁に分岐して長く伸びたものはない。要するに骨格菌糸がなくて結合菌糸ばかりのように見える(l)。写真(l)で隔壁のように見えるのは、菌糸が折れ曲がって重なりあった部分だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 保育社図鑑によれば、こういった形のきのこで二菌糸型のものにはフサタケ属(Pterula)とハナビタケ属(Deflexula)があるとされる。そしてフサタケ属の原菌糸には一般にクランプがあり、骨格菌糸はほとんど分枝しないという。ハナビタケ属については、そういう属があることだけを示唆していて、その形質的特徴には触れていない。
 山渓図鑑には材上生のシダレハナビタケの写真があるが詳しい形質状態については記されていない。そこでIndex Fungorumに掲載されたいくつかのDeflexulaについての記述を読むと、この属にはどうやら骨格菌糸にクランプを持つという特徴があるらしい。ということは、このきのこはハナビタケ属でもないことになる。
 すでに誰かがどこかにこの種について発表していて種名もついているのかもしれないが、これ以上調べるのも面倒だし、分類学的なことや種名がどうこうには関心もないので、この時点で探索は放棄して、きのこも庭の腐植土の上に捨てた。