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[標本番号:No.87   採集日:2007/01/31   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:ムチゴケ   学名:Bazzania pompeana]
 
2007年2月3日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 奥多摩の御岳山裏参道は、越沢を左下にみて登る杉林の道だ。杉の樹幹にはホソバオキナゴケやシシゴケが群生している。支沢と合流するあたりでは、苔類が樹幹から腐葉土にかけてよく見られた。羽状に枝分かれして大きく拡がったものが目立った(a)。群の続きには乾燥した部分もあり、よく見ると鞭のようなものを多数つけている(b)。
 枝分かれした一本をとりだして逆さにしてみると、腹側の茎から多数の鞭がでている(c)。茎の長さ4〜8cm、葉を含めた幅は3〜5mm、葉は倒瓦状に重なり合って着き、多数の鞭枝を長く伸ばしている。葉は先端に3歯をもった舌形で腹片はない(d, f)。腹葉は透明で茶褐色、茎径の2.5〜3.5倍の幅で、茎に圧着するように着き、丸みを帯びた四角形で、縁はおおむね4裂し、縁にはいくつもの歯がある(h, i)。茎の先端には花被が見られる(e)。
 葉の葉身細胞には小さなトリゴンがあり、紡錘形〜楕円形の油体が4〜10ほどある(g)。腹葉の細胞は、半分ほどは葉緑体も油体も持たないが、茎に近い部分では葉緑体をもち、一部には油体が2〜4ほど見られる(j)。
 鞭枝は、葉を取り去った細い茎のような状態をしているが、所々に糸状の組織(仮根?)が束になって出ており、そこには腹葉に似た組織がみられる(k, l)。
 ムチゴケ属 Bazzania であることは間違いない。検索表をたどると、ムチゴケかコムチゴケのいずれかのようだ。コムチゴケは大きさの変異が大きいというが、コムチゴケにしては、腹葉の特徴が図鑑の記載とやや異なる。図鑑の記載からはムチゴケとの区別がはっきりしないが、どちらかといえば、腹葉の特徴がムチゴケ Bazzania pompeana のようだ。以前出会ったコムチゴケと比較して、全体の大きさがあまりにも違い、腹葉の縁の形態もかなりちがう(覚書2006.12.12)。ムチゴケと考えてよいのではあるまいか。